フェンシング名選手列伝「稀代の一発屋」武田仁
ついに才能が開花、インターハイ入賞
武田仁はまだまだ「強い人はフルーレをやる」という時代だった為、高校時代まではフルーレもやっている。
高校の頃には本人の中ではもうエペをやりたいという意識がはっきりしていたが、まわりはそれを許さず、並行していた。
しかしついにその努力は実り、高校3年のときに、フルーレ個人でインターハイベスト16、フルーレ団体でインターハイベスト8、そして何よりエペ個人で3位入賞している。
これは決して図抜けた成績ではないかもしれない。先輩である三宅はインターハイを優勝しているし、エペ個人で優勝したのはまさに傑出した逸材で後々まで切磋琢磨する事になる山田優であり、武田仁はその陰に隠れているとも言える。
だがフェンシングにおいてそこまでエリート街道というわけではなかった武田仁が、ついにフェンシング界のトップレベルに到達したのだ。
次々に好成績をあげ、一躍トップ選手へ
ここから武田仁の輝かしい競技歴が刻まれていく。
高校を卒業して大学に進学した武田仁は、持って生まれた面倒見の良さもあいまって、先輩や後輩も巻き込んで強化していく。
これはある意味画期的なことだった。
先輩の三宅もそうであるように、フェンシング界では大抵強くなるとJISSという国立スポーツ科学センターでの代表級の練習にばかり参加し、学校の練習にはあまり顔を出さなくなる。
そうなると、個人では強くなるものの学校は一向に変わらず、団体での成績は上がっていかない。
ところが武田仁は学校での練習に参加し、誰よりもハードワークに励む事で、自らの身を持って示し、自分の所属する間に慶應フェンシング部、特にエペ勢は飛躍的にレベルが上がっていく。
大学2年の時にインカレ個人準優勝、慶應義塾大学もエペ2部リーグで優勝に導くだけでなく、全日本選手権団体4位にまで押し上げる。
アジアU23では個人3位、さらにアジアジュニアでは山田優もいる団体で優勝、世界ジュニアでもベスト8に入賞する。
大学3年に上がってからはさらに部内も押し上げていき、ユニバーシアード個人では15位だったものの、大学をエペ1部リーグで準優勝、王座決定戦ではついに優勝に導き、全日本選手権団体でも準優勝という成績をあげる。
そして大学最終年である2016年、個人としてはインカレは準優勝に終わるものの、ついに宿敵・山田優も倒して全日本選手権優勝、個人として日本の頂点に辿り着く。
しかも学校も大学エペ1部リーグ優勝、全日本選手権団体でも3位入賞となる。
初優勝での引退宣言、「一発屋です!」
よもや全日本選手権という最高峰の舞台で初優勝を決めた選手のインタビューで「一発屋です!」という言葉が出ると、誰が予想できたであろうか。
彼の謙虚さがあらわれたエピソードと言えるが、そこで武田仁は同時に引退宣言もするのであった。
彼のその「一発屋です!」という発言は、今やフェンシング界では知らぬ者のいない名ゼリフとして、斉田守氏のオリンピック解説時の「ゆうきぃ~~~」と並んで称されている。
フェンシングを始める小学生も、この2つのセリフはだいたい知っているほどである。惜しむらくは、あまりかっこよくないので真似して発言する選手が後に続かない事、だろうか。
だが武田仁本人は、全日本選手権優勝という輝かしい戦績よりも、母校を1部リーグ優勝させたほうが嬉しい、と平然と言い切る。
これは彼の人柄をよくあらわしていて、自分だけが強くなっても仕方ない、まわりも強くしたいという、責任感と面倒見の良さの結実した結果なのだ。
引退・・・一発屋・・・・あれ?
武田仁が「初優勝で即引退宣言」とか「珍行動」とスポーツニュースの見出しまで飾った、その翌年の2017年。
あろうことか全日本選手権の会場に、武田仁の姿はあった。
スポーツニュースの見出しまで飾った「引退宣言」は、「いやなんか権利を持ってて出られたから」という実に適当な理由でしれっと撤回される。
そんなやる気の無い中でもそこはディフェンディングチャンピオン、しれっと出ただけあってしれっと勝ち上がっていき、よもやの「ちゃっかり3位入賞」となる。
好キャラクター・武田仁
既に何度か触れてきたが、スポーツ選手は強くなるほどある種の自己中心的なところが強くなるものだが、武田仁にはそういうものはなかった。
常に後輩の事も考えていて、食事にもよく連れて行った。
ただこの男は恐ろしい大食漢であり、焼肉食べ放題で後輩がもう満腹となれば「お前ザコだな!」と言って笑いながら追加注文を入れる。
一時期はSNSのプロフィール写真が回転寿司の皿が恐ろしい数積み重なったものを前にどや顔で撮ったものであったほどだ。
ちなみに別のSNSではプロフィール写真がエネゴリ君となっており、それを見た者はエネゴリ君を見る度に武田仁にしか見えないという弊害まで生み出した。
そんなエネゴリ君は、実は華道は小さい頃からやっているガチ勢だったりもする。いつの日か、華道の世界でも頂点を極めるのかもしれない。
いま日本のエペが熱い
武田仁は続けているのか続けていないのかよく分からないが、日本のエペ代表は今や世界を相手に活躍しており、今後が注目される。
もう間もなく東京オリンピックもあり、そこではエペのメダル獲得、なんてそんな姿も見られるかもしれない。
そしてその時ひょっとすると・・・テレビの解説席にはなぜかしれっとちゃっかりと武田仁が座っていて、「まさるぅ~~~」と泣くかもしれない。
今後どこに出没するのかよく分からないが、この男には今後も注目である。
[記事提供:国内最大級の婚活パーティー・お見合い・街コン情報サイトParties(パーティーズ)(https://parties.jp/)]
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