「面白い野球」を望まれる時期は過ぎた 新庄剛志監督に就任3年目で求められる成功への“近道”とは?
投手陣にはポジティブな材料が多い。それだけに……
采配にも疑問はある。スクイズやダブルスチールの多用に象徴される動きの多い作戦が、奏功しているようには思えない。
昨年の464得点はリーグ5位で、得点力の少なさを補うために、足を絡めた戦術を使っていた面はある。だが75盗塁を決めた一方で失敗数はリーグワーストの49回を記録。成功率は60.5%にしかならなかった。積極的なベースランニングを奨励した結果、先の塁を目指してアウトになるケースも目についた。チーム出塁率は.297と低く、ただでさえ少なかった走者が出る機会を逸し、チャンスを潰す場面も目立った。
バントや盗塁で走者を得点圏に進める作戦は、長打が少なくとも打率の高い打線であれば、効果的になり得る。しかし、23年の日本ハムのチーム打率はリーグ最低の.231で、100本塁打は4位ながら1位のオリックスとの差はわずかに9本。二塁打も195本で3位だった。こうした数字を見ても、あまり動かず長打が出るのを待ったほうが、得点効率は高くなるのではないかと思える。ゆえに新庄監督が自軍の戦力を正確に把握して作戦を出していたとは言い難い。
ただ、新庄監督が就任してから、チームの雰囲気は明らかに良くなった。その点は間違いなく功績として挙げられる。また、今オフにメジャー挑戦を選んだ上沢直之の離脱は大きな痛手ではあるものの、フリーエージェントでオリックスから山﨑福也を獲得。さらにエース格だった加藤貴之も残留を選んだほか、11月のアジアプロ野球チャンピオンシップでは根本悠楓が好投するなど、投手陣にはポジティブな材料が多い。
リーグワーストの94失策だった守備力が、今春のキャンプで徹底的に改善されるなら、最下位からの浮上も見えてくる。さすがに現状戦力では、優勝とまでは行かないだろうが、最低限クライマックスシリーズに出場できたとしたら、新庄監督の25年以降の続投もあり得ない話ではない。
そのために求められるのは「辛抱」だ。攻撃では盗塁やスクイズといった、リスクが大きい割に見返りの少ない作戦を控え、守備においても経験の乏しいポジションにつかせる機会を減らし、無闇な抜擢は避けるべきだろう。見切りが早い傾向があった新外国人選手にも、慣れる時間を与えて欲しい。
就任3年目。ファンは「新庄ならではの面白い野球」を望む時期はすでに過ぎており、「勝つ野球」を求めている。それを実現するための近道は、あまり自分の色を出しすぎないことではないだろうか。
[文/出野哲也]
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