松岡修造氏「錦織圭は大事な試合で勝てないというイメージから脱却する大会」、全米オープンテニスの見どころ
——具体的に気をつけるべきところはどんなところでしょうか?
松岡:グランドスラムで接戦になった試合は、ほとんど錦織選手が優位なんですよ。このままストレートで勝つという時に一瞬気が抜けてしまう。相手がすごくて接戦になったのではなく、自分の集中力がわざわざ混戦にさせているケースが多いように思います。それを圭もわかっているから、ウインブルドンではそういう隙を見せなかった。その隙を見せなければいいと思います。でもそう簡単にはいかないです。3回戦や4回戦で、若手でもとてつもなく上手い人に当たることもあります。若手はみんな強くなってきていますけど、でもまだビッグ3になりうる選手が出てきていない。
——若手で注目している選手はいますか?
松岡:僕よりも(全米オープンテニスを放送している)WOWOWさんの方が詳しいと思いますが、アレクサンダー・ズベレフ、ステファノス・チチパス、ドミニク・ティームなどでしょうか。彼らは世界一になっていないといけない選手。でもそれ以上に問題なのが、ビッグ3が進化しているということ。フェデラーは全盛期よりも上手くなっているし、ジョコビッチも守備だけじゃなくどんどん攻撃してくる。ナダルもボールについていっている。年齢を重ねながら進化していくテニスを僕は初めて見ています。何が起こっているのか僕もわからないくらい、世界中のテニスファンも驚きだと思います。
——錦織選手がビッグ3に勝つために必要なものは何でしょうか?
松岡:ストレートに言うと、フェデラーたちが100%だったら勝てません。でも100%で来ることなんて年間数回、100%じゃない確率の方が高いですよ。彼らが100%じゃない時に、圭は100%に近いところにいて欲しい。それをどのように出すかと言えば、第一条件は体力、第二条件は集中力。この集中力という体力がどこまで持つか。第三は、自分はできると信じる体力。この三つの要素が重ならない限り、一人に勝っても二人は無理でしょう。優勝するには、若手も含め相当勝ち上がっていかないといけないので大変なんですよ。圭はよくやっていると言ってあげたいですよ。でも、優勝するために相当シビアなことを言っています。
——錦織選手は今年30歳になります。彼のキャリアにおいて、まだまだ変わる余地がありますか?
松岡:フェデラーは38歳。それは大きな希望を錦織選手に与えていると思います。選手それぞれプレースタイルが違いますが、特にナダルは体力を大事にする選手。年齢を重ねてもこんなにできるんだと。錦織選手で言うと、テニスはすでに備わっているので、あと必要なのはメンタル。彼の体格でこれだけ安定して成績を残しているのはすごいことです。でも大事な時、強い選手に対して、「どうした?」というような試合で負けてしまうことが多い選手という評価もある。そこを打破することをみんな期待しているし、一番期待しているのが錦織圭でしょう。そこを打破した時に、何歳までも続けるんじゃないですかね。だってきついですよ。他の人よりも何倍も動いて、他の人よりも集中が必要ですから。キーポイントの一つが2020年のオリンピックになる気がしますね。グランドスラムで優勝するとか、オリンピックで日本人の大きな応援を受けるとか、特別なエネルギーがやってきて、それによって彼のテニス人生が変わるかもしれない。例えばランキング20位以内でずっと長いこと続けるという考えもあるかもしれないし、それはそれですごいですが、僕らの期待しているのはグランドスラム、本当のトップを狙って欲しい。みんな思っていますよ。圭はそこまでいける選手ですから。
「全米オープンテニス」は8月26日~9月9日まで、WOWOWで連日独占生中継。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]