世界をも魅了した渋野日向子 一時的なフィーバーで終わらないその人間力とは
しぶこフィーバーの1年が終わった。
昨年プロテストに合格したばかりの渋野日向子(21)が8月の全英女子オープンで優勝。海外女子メジャー制覇は日本人42年ぶりの快挙だった。天真らんまんな笑顔でプレーし、一気に頂点まで駆け上がる姿から、海外メディアに「スマイリング・シンデレラ」と呼ばれた。「しぶこ」の愛称とともに、2019年の新語・流行語大賞でもトップ10入り。一躍、時の人になり、女子ゴルフ界の救世主となった。
写真/GettyImages
世界を魅了した「しぶこスタイル」
人間的な魅力があふれる。全英では、優勝争いのまっただ中でもお菓子をほうばり、笑顔でギャラリーと気軽にハイタッチした。ある欧米記者は「しかめっ面でプレーが遅い女子ツアーのイメージを変えてくれた」と絶賛。プレーに集中するあまり怖い表情になったり、失敗してふてくされる選手も多いなか、渋野は緊張感の中でもよく笑い、速いテンポでプレーし、ミスしても潔い。気負うことなく、自然体でプレーを楽しむ「しぶこスタイル」が、世界を魅了した。
勝負ゆえ、息をのむような緊迫感のある場面が多いが、渋野はそれを感じさせない。国内ツアー最終戦のLPGAツアー選手権リコーカップ(宮崎CC)では、同組でラウンドしたイ・ボミが好パットを沈めると、自分のことのように喜んだ。激しい首位争いを忘れさせるような、ほのぼのとしたシーンも、渋野にとっては珍しくない。「一緒に回っている選手がいいプレーをしたら『ナイス!』と言いたい」がモットー。観客だけでなく、選手や裏方さんからも愛される。
一方で、苦悩する時期もあったという。激動のシーズンを振り返った渋野は「全英に勝った後、9月ごろが一番きつかった。結果を出さなきゃと思っても、うまくいかない。スマイルシンデレラとか言われて、ずっと笑っていないといけないのかなと思っていた時期もある。全然シンデレラなんかじゃないのに。1人でいる時はだいたい無言なので」。注目度が高まるにつれ、重圧がかかっていたことを明かした。