次のステップに脱皮したいホンダ 4度目のF1撤退を決めた「真の理由」とは
ホンダの第1期プロジェクトで実戦を戦ったF1マシン「RA273」(鶴田真也撮影)
ホンダの八郷隆弘社長は撤退の理由について「将来、カーボンニュートラルを実現するために、今回大きく舵を切り、こたなパワーユニットとエネルギーの研究開発に経営資源を集中していくため」と説明した。ちなみにカーボンニュートラルとは温室効果のある二酸化炭素の排出量を抑える取り組みのこと。2050年までに実現させたい意向で「その一環として、F1で培ったエネルギーマネジメント技術や燃料技術、人材を先進パワーユニットとエネルギーの研究開発に振り向ける」とした。
ただし、環境問題に関しては以前から取り組んできたこと。撤退の真の理由は4輪の売り上げが大幅に落ち込んで、経営不振を招きかねないことにあったのではないか。F1プロジェクトも年間160億円近くかかるとされ、数年前から社内で目の敵にされていたという。
実際にホンダ狭山工場(埼玉県)の閉鎖を決めており、新型コロナウイルスの感染拡大も手伝って、狭山工場の下請け企業では売り上げが10分の1まで落ちてしまったところもある。「時代は自動運転になりつつある。レースをやっている意味はもはやないのでは」とF1撤退の方針を支持する経営者の声も聞かれた。全社的には背に腹は代えられない状況だったとみる向きもある。
「レースはホンダのDNA」とこれまでスローガンのようにうたわれてきた。今年6月に発行された2020―21年のホンダの会社案内にも「なぜレースに挑戦するのか。それは、過酷なレースの中でこそ、技術が、情熱が磨きあげられると信じているから」との言葉が紹介されている。
ところが、1ページ目に出てくるのはホンダジェットと、戦後に発売された「A型」と呼ばれるエンジン付き自転車の写真。モータースポーツの紹介があるのは全12ページ中9ページ目と奥まったところにあり、押し出し感はない。
年齢が高い世代は、ホンダのことを、F1と一蓮托生の宿命を背負うフェラーリと同一視してしまうところはある。F1撤退を惜しむ声の源もその辺りにありそう。無論、次のステップに脱皮したいホンダにとっては大きなお世話かもしれないが。
[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]
トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)
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