インボイス制度はサッカー界にも影響アリ 選手だけでなくサポーターにも経済的負担
インボイス制度はサッカー界にも影響を及ぼしそうだ。写真はイメージ(C)getty Images
今年10月から導入が予定されているインボイス制度。免税事業者が多く在籍するエンタメ業界から主に反対の声が上がっているが、その影響は様々な業界にも波及することが予想される。あまり注目されていないが、サッカー界も例外ではない。長年サッカー界の取材に携わり、過去にはインボイス制度がJリーグに与える影響について警備を鳴らす記事を執筆したこともあるスポーツライターに、インボイス制度がもたらす問題点を聞いた。
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まずインボイス制度について、 「税率の変更を伴わない消費税の増税」と説明。「売上1,000万円以下の小規模事業者は、消費税の支払いが免除されていますが、実質的にこの免税制度をなくす制度です」と続けた。インボイス制度がサッカー界に与える影響を口にする。
「 まず、Jリーグ選手は基本的に個人事業主で、クラブとは業務委託契約を結んでいます。年俸1,000万円以下の選手がインボイスに登録した場合、免除されていた消費税を支払うことになります。J1には免税事業者の選手はあまりいませんが、J2以下のクラブは平均年棒600万円ほどですので、多くの選手が免税事業者と言って良い。年俸1000万円以下の選手がインボイスに登録し、年俸が据え置きのままなら、収入は減ってしまうでしょう。また、サッカークラブに属する免税事業者は選手だけではなく、スカウトやフィジカルコーチなど多種多様。影響を受けるクラブ関係者は少なくありません」
インボイス登録はあくまで任意である。選手が登録を拒否した場合はどうなるのか。
「選手が登録しなかった場合は、 年俸1000万円以下の選手への支払いが仕入税額控除に適用できなくなるため、クラブの税負担が増加します。J2以下のカテゴリに所属するクラブの方が、年俸1000万円以下の選手を抱える数が多く、事業規模が小さいクラブほど税負担が増えるという歪な状況が生まれるわけです。仮にクラブが税負担をカバーしきれない場合、チケットやグッズなどへの価格転嫁で、サポーターが負担することになるでしょう」
サッカー界ではあまりインボイス制度に反対を唱える声は聞かれない。その理由として「まずインボイス制度そのものが知られていない」と回答。さらに、“体育会系特有の思考“も、その影響が周知されない要因だという。
「サッカー界は“マッチョ”な価値観が珍しくありません。『インボイス制度の影響で収入が減るかもしれない』『クラブ側が選手の解雇を積極的に行うかもしれない』と言われても、選手は『実力がないのであれば仕方ない 。それが自分の評価。実力をつけて評価を高めて、インボイスの影響をチャラにできるくらいお金を貰えばいい』と諦めがち。サッカーファンの間でも似たような価値観が共有されており、なかなかサッカー界では問題視されにくい状況と言えます」