「優勝」という目標は誰のためにある? 森保ジャパンは外野にイジられても「焦らず、揺らがず、保てるか」

森保監督の舵取りに注目が集まる。(C)Getty Images
優勝という言葉は強いので、「モチベーションが高まる」のは間違いない。だが、これから先は勝利だけでなく敗北も経験する中で、目標と現実のコントラストに揺れながら「保てる」のか、懸念がある。実際、昨年のアジアカップ敗退後も、チームの中で解決すべきことが外に向けて発信され、少し危うかった。目標との乖離が強まれば、個々に焦りや勇み足が出やすくなるのは当然だ。
今後、ワールドカップ本番が近づけば一層、「目標は優勝」の件でイジられるだろう。試合に敗れれば「身の程知らず」「現実を教えられた」と逆風にさらされ、嘲笑される。そのとき、外が騒がしいのはどうでもいいが、中まで騒がしくなるのはまずい。
2010年のスペイン代表と2022年のアルゼンチン代表は、ワールドカップで初戦に敗れたチームが優勝を成し遂げるという、史上2例しかないチームだった。2010年当時、スペインを率いたデル・ボスケ監督は、初戦でスイスに0-1で敗れた後、ミーティングで選手にこう語ったという。
「何も変える必要はない」
1戦目に敗れると、普通は2戦目で様々なテコ入れをしたくなるもので、当時はスペインはボールを回しているだけ等の批判も多かった。だが、デル・ボスケ監督はあえて落ち着き払って、不変を強調。どのみち、3~4日で変えられることなど、たかが知れている。
焦らず、揺らがず。このデル・ボスケの態度がチームに自信を取り戻させ、スペインはワールドカップ初優勝に向け、快進撃を始めた。
手本になる事例だ。今回の日本が宣言した「優勝」という目標設定は概ね良い。「やるべきことが明確になる」メリットは疑いようがないし、モチベーションも上がるからだ。ただし唯一、外を騒がしくする中で、「焦らず揺らがず保てるか」という懸念を除けば。
これまでの日本代表はいわゆる大口を叩いた後、あまり良い結果が出ない傾向があった。優勝を宣言した2014年のブラジルワールドカップも、昨年のアジアカップもそう。どちらも調子が良かった日本が、コートジボワールやイラクなどの相手に分析され、不測の事態に直面したとき、焦り、揺らぎ、保てなかった。
「優勝」という目標設定は強い。状況次第で薬にも毒にもなる。最終的に功を奏するか否かは、「保てるか」がポイントだ。日本のデル・ボスケ、森保監督のマネージメントが鍵を握っている。
[文:清水英斗]
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