元DeNA・松本啓二朗 新日鐵住金かずさマジックで野球ができる喜びを実感。「大人の高校野球みたいな感じです」
師匠と慕うソフトバンク・内川の一言が現役続行を後押しした
元DeNAの松本啓二朗(31)は社会人野球・新日鐵住金かずさマジックで新たな野球人生をスタートして4か月が経った。「プロ野球とは全然違う世界ですね。大人の高校野球みたいな感じです。他の選手に聞くと都市対抗は凄く緊張するっていうけど、僕は経験がないのでわからないまま駆け抜けていこうかなと。今は緊張より野球できる喜びの方が大きい」と目を輝かせた。
社会人野球で生活サイクルが一変した。不動産会社・新昭和に入社。総務人事部で働き、その後は新日鐵住金君津球場に移動して練習する。社会人の大会では午前9時前に試合開始の時もある。「午前6時にバスが出発なので朝の5時には起きますね。こんなに早く起きるのは高校以来。試合前もプロと違って打撃練習がない。最初は不安だったけど試合で打てる打てないは関係ないのかなって思うようになりました」と笑う。練習メニューも丁寧に行う繊細な性格だが、新しい環境に適応する姿勢で神経が図太くなった。
プロ9年間で通算302試合出場して打率・235、7本塁打。今オフにDeNAを退団して12球団合同トライアウトを受けたが、獲得に乗り出す球団はなかった。引退も頭をよぎる中、新日鐵住金かずさマジックからオファーが届いた。指導者の道も考えたが、まだプレーしたい思いが消えない。現役続行を後押ししたのは師と仰ぐソフトバンクの内川からの一言だった。「ちょっとでもモヤモヤがあったら野球を続けたほうがいい」。
プロ入団後は横浜(現DeNA)で同僚だった内川が毎年1月に行う合同自主トレに参加した。「技術的に毎年新しいことを教えてもらえる。辛かったのは球界を代表する選手とやっていたこと。今宮健太、鈴木誠也、上林…。みんな凄く伸びたのに、僕はなかなか結果が出なくて…。申し訳ない思いもありました」。シーズンオフになると内川から離れて1人で自主トレをやろうか何度も迷った。でも参加し続けた。「今思うと続けてよかった。内川さんのアドバイスって野球のセオリーと違うことがあるんです。でもそれが凄く説得力があって。野球人生で大きな財産になる」。印象に残っている助言。ある時、「フライを打つ時はバットで上から(球の下半分を)切ったほうがいい、逆にゴロを打ちたいんだったらアッパーで(球の上半分を)すくったほうがいい」と言われて納得したという。新日鐵住金かずさマジックでは野手最年長。自分のことだけでなく、若手を引っ張らなければいけない立場だ。ある日の打撃練習で「叩け!」「叩け!」と選手たちで声を掛け合っていたが、ポップフライばかり上がる。松本が内川の助言を思い出して声を掛けた。
「大人の高校野球」と形容した社会人野球で松本自身も学ぶことが多いという。「選手がメチャメチャ貪欲で、夜遅くまで凄く練習する。キャンプ中も投手2人が部屋に来て、『ストレッチのやり方を教えてもらえますか?』って。上のステージを目指している選手もいれば、1年でも長く野球をやりたい選手もいる。みんな野球が大好きなんです」。プロ野球の現役時代は1軍と2軍を行き来することが多かったため、安打を打っても心から喜べなかったという。「その日が良くても次の日がダメだったら…という毎日だった。高校の時は、はっちゃけて喜んでいたけどプロでは記憶にない。こんな気持ちのまま野球が終わっていいのかなという思いはどこかにあったんです。もう一度高校野球みたいに新鮮な気持ちで喜怒哀楽を出して勝ちたい。チームみんなで喜びたいですね」。
すでに必要不可欠な存在だ。都市対抗予選では大活躍。負ければ敗退の南関東大会第三代表決定戦・JFE東日本戦では同点の9回に先頭打者で中前打。1死満塁から浅い右飛で二塁から飛び出した走者に捕手が二塁へ送球した瞬間、三塁走者でスタートを切り本塁生還で決勝点を運んだ。好走塁で2年ぶり12回目の都市対抗本大会出場に導き、鈴木秀範監督も「啓次朗の存在は非常に大きい」と絶賛した。目標は創部初の都市対抗優勝。野球ができる喜びを胸にグラウンドで躍動する。
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[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]