元仙台育英の“野球エリート”が見たどん底 DeNA西巻賢二が2度の戦力外から模索し続ける「生きる道」【コラム】
DeNAでプロ3球団目となった西巻。育成契約から這い上がった苦労人は淡々と出番のために準備を重ねていく。写真:萩原孝弘
23歳で3チーム目。模索する生きる道
「こうやって3球団でやらせていただけるというのは、ほんとにありがたいことです」
DeNAのブルーのユニフォームに身を包んだ西巻賢二は感慨深げに語った。
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仙台育英高時代は1年時からベンチ入りを果たし、甲子園を賑やかせた。U-18日本代表にも選抜されるなど、いわゆる野球エリート道を歩んできた男は、2018年に楽天でプロ野球の扉を叩いた。
ルーキーから一軍で頭角を現しながらも、西巻は突き抜けきれず。2019年には楽天を、2022年にはロッテから戦力外通告と、若くして2回もキャリアのどん底を見ている。それだけに冒頭の言葉の意味は重い。
22年の11月に行われた育成契約を交わしたDeNAでの入団会見では「ここではやり残すことがないように、一日一日を過ごしていきたいなと思います」と決意し、昨年4月には支配下契約を勝ち取る上々のスタートを切った。
翌日には一軍へ招聘されたが、結果を残せず、わずか7試合で再びファームへ戻ってしまった。本人は「チャンス与えてもらってた方だとは自分では感じてるので。ただただチャンスを掴みきれていなかったんです」と自らを責める。
その後も「常にいつ呼ばれてもいい状態にしておくことだけを考えてた」と腐らずに研鑽を積んだ。しかし、西巻にその時は訪れず、そのままシーズンは終演を迎えてしまった。
それでも西巻は、「ファームの試合で、特に盗塁に力を入れてました。自分は爆発的に足が速いっていうわけでもないと思っているので、その中でなんだろうと考えました。去年から相手ピッチャーを研究しながら、常に盗塁した時になんで走ったかっていう根拠を 話せるような状態でスタートを切るようにしていますね。闇雲には走ってないです」と強調。“プロとして生きる道”を模索してきた。
そして、熱心な取り組みが24年に繋がっていった。
昨季のDeNAのチーム盗塁数はリーグワーストの「33」に終わった。ここぞの場面で足が使えないチーム状況を加味すれば、イースタンながら16盗塁を決めた西巻の足は魅力的だ。「自分の中で盗塁はスタートと中間層(塁間)の速さ、あとスライディング。この3つがあっての盗塁だと思っています。ただ足が速いだけでは盗塁って決まらないので。その中でも特にスタートとスライディングっていう部分には特に力入れてやっていました」との試みは、今春のキャンプA班スタートにも反映された。
直接一軍の首脳陣の前でアピールを続けた。西巻はスーパーサブとしての役割を再認識する。
「キャンプの時からの使われ方で、ほんとにどこでも行ける準備をしなきゃいけないっていうのは感じました。その中で特に今年は走塁に力入れてるってことで、やっぱ自分は代走から行くこともありますし、その中でいかに次の塁、また次の、次の塁を狙う走塁というのはやっぱり求められてくる。ほんとに走塁も守備もとにかく何でもできるような選手になることが今、大事かなと思ってます」
無論、その努力を指揮官も理解する。三浦大輔監督も「自分が何を求められているかを、非常によくわかってグラウンドに立ってくれている。今までウチにいなかったものを今年は出してくれる選手かなと思います。自分をよくわかっていますね」と“縁の下の力持ち”的存在に高評価を与えている。