「ノムさんの右腕」が語る「野村ノート」、「ID野球」誕生秘話
「ID野球」と「TOP野球」
野村監督といえば、「ID野球」と言われました。
野村監督がヤクルトに就任した際、監督会議というものが行われまして、そこで「チームのキャッチフレーズを発表するから、何かないか」と監督に言われました。
僕なりに色んな人にリサーチをして、「インポータント・データ」という言葉に突き当たりました。これは、データ重視ということを意味します。その当時、ICタグだとか、IDカードといったものが流行りだした時代だったので、「ID野球はどうですか?」と提案しました。しかし、「気に入らんな。俺が言いたいのはこう言う事じゃないんだ。」と言われてしまいました。
ですが、結果としてID野球というのが採用され(笑)、一時代野球界で定着したわけです。
その後、阪神時代にも同じようにキャッチフレーズを考えて欲しいと言われたことがありました。IDとまた言っても監督は気に入らないだろうし…と考えていたところ、監督がいつも言っている、言葉を思い出しました。
監督は常々、「人間は体だけじゃないんだ。頭をどのように使うか。だから『体力、気力、知力』のうち、体力と気力を問題にするようなレベルではだめだ。これらはプロ野球人として当然だろ。勝負は知力なんだよ。」と言っていました。
私はそこから「体力」、「気力」、「知力」この人間が持っているものトータルで勝負しなくてはいけないと思いました。
そして、プロセスについても言っていました「結果が欲しいなら、プロセスを重視しなくてはいけない。」と。
その中で3回野球をしろという話もしていましたね。試合前に今日は相手がどんなピッチャーだからこうするという準備野球。そして実践野球。試合後には復習野球。これをやっていく過程で絶対結果が出る。そう指導していました。
そして最終的に私は、キャッチフレーズを決める際は辞書を引き、「オブジェクトレッスン」という言葉を見つけました。実践訓練という意味です。これはいいと思いました。そこでT(TOTAL)、P(PROCESS)、O(OBJECT LESSON)。この3つを組み合わせたら「TOP」になる、そう思ったんですね。そこで、監督に「TOP野球」はどうかと提案したところ、「それこそ俺が思う野球にぴったしだ」、こう言われスローガンに決定しました。
ところが今、関西に行って聞いてみても、野村監督のこの「TOP野球」というキャッチフレーズを知っている人は誰もいません。それはなぜか。阪神時代、3年連続最下位だったからです。やはり実績がないと根付かないということを思い知らされましたね。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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