女性の野球界進出へ多大な貢献 20年越しで夢を叶えたメジャーリーグ初の日本人女性アスレチックトレーナー
男女で着替えやトイレも違う。私たちの想像を超える苦労やストレスもあったと思う
「J.T. STRENGTH & CONDITIONING」の代表取締役社長として活動しているJ.T.(高橋純一)と申します。今回はメジャーリーグで日本人初の女性アスレチックトレーナーとしてダイヤモンドバックスで活躍する谷沢順子さんについてお話させて頂きます。
谷沢さんの肩書はマニュアルセラピスト兼アスレチックトレーナー。選手のマッサージ、傷害の治療、リハビリ、予防を含めたリスクマネジメントなど活動は多岐にわたります。僕が谷沢さんと出会ったのは15年前。03年度サンディエゴ・パドレスのスプリングトレーニングに谷沢さんはATC(アスレチックトレーナー)、私はS&C(トレーニング部門)のインターン(研修生)として切磋琢磨していた時代でした。
お父さんは、中日で活躍された谷沢健一さん。「メジャーリーグのアスレチックトレーナーとして働きたい」と当時から将来のビジョンは明確にしていました。ポジティブな性格で凄く純粋な方。勉強熱心でトレーナーの活動を楽しそうに話す姿を見て本当に好きなのだなと思ったのが印象に残っています。
仕事ぶりも非常に優秀な方で、その後も米国に残り大学のアスレチックトレーナーとして活動継続。それと同時に世界陸上やリオ五輪など数々の国際舞台で米国陸上代表をサポートしてきました。昨年もWBCで米国代表チームのマニュアルセラピストとして優勝に貢献しています。僕が谷沢さんを凄いと思うのは米国留学時代を含め、20年越しにメジャーリーグのアスレチックトレーナーになる目標を「日本人」、「女性」という垣根を越え、切り拓いたブレない心。国籍、言葉、文化の面はもちろん、性別、何より前例がないメジャーリーグとう舞台にはい上がることは私たちの想像を超える苦労やストレスもあったと思います。それでも決して心が折れず、夢を叶えた真摯な生き方を尊敬します。ダイヤモンドバックスも谷沢さんの高い能力がチームに必要だからと評価して採用したのだと思います。
女性の社会進出が推奨されている中で、谷沢さんの業績は世界の女性アスレチックトレーナーのパイオニアとして野球界のみならず、世界のスポーツ界でも画期的な出来事であることは間違いありません。固定観念にとらわれず、自分の信じる道を邁進する生き方は私も見習う点が多いです。現在でも日本球界には女性トレーナーは誕生していませんが、MLB(メジャーリーグ)、NPB(日本球界)で谷沢さんの今後の活躍により女性スタッフの活動が当たり前になる時代がすぐ近くまできていると確信しています。
■編集部からのお知らせ
3月7日に発売の雑誌「CoCoKARAnext」では読売ジャイアンツ・菅野智之投手のインタビューの他、プロ野球選手に学ぶ仕事術などストレスフルな時期を乗り越える情報を掲載。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません
[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]
高橋 純一(たかはし・じゅんいち)
MLBサンディエゴパドレスで通訳兼コンディショニング補佐を務めた後、千葉ロッテマリーンズ、ヤクルトスワローズ、DeNAベイスターズファーム等でチーフトレーナーとして活動。17年より独立。幅広いストレングス&コンディショニング領域をアレンジ、シンプル化させ、「俺、最高。」「やってみるをかなえる。」をキーワードに老若男女問わず、自分の肉体の可能性を高め、向上していくサポートを行う。コーポレートコンディショニングという企業のトレーニング意識を変えるコーチングも担う。
J.T. STRENGTH & CONDITIONING コーポレートサイト(http://www.jt-sc.com)