井上尚弥はなぜ“圧倒的に強いのか” リングに沈んだ敗者たちの言葉に見る「最強」の理由

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21連勝中の世界戦におけるKO率は実に90.4%

タパレスも寄せ付けず、撃破した井上。敵なしの強さを続ける快進撃の秘密に迫る。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 26戦無敗、23KO。これは井上尚弥(大橋)の並外れた強さをまざまざと物語る戦績と言える。

 ボクシング界は各国の猛者たちと拳を交わすなかで「結果こそすべて」と言われる異色の世界。そのなかで井上は史上2人目となる2階級での4団体統一を成し遂げ、己の声価を確固たるものとした。

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 昨年12月26日に行われたWBA&IBF王者だったマーロン・タパレス(フィリピン)との世界スーパーバンタム級4団体統一戦は圧巻だった。「弱点は分かっている」と語っていた相手に反撃の隙をほとんど与えずに終始主導権を握ると、10回に強烈なワンツーパンチを繰り出してTKO勝ち。趨勢を定めた一撃は31歳のチャンプが「本当に身体が動かなくなった」と告白するほどの破壊力を誇った。

 21連勝中の世界戦におけるKO率は実に90.4%。この数値だけを見ると、「モンスター」の異名を持つ井上のパワーの凄まじさを強く印象付けられる。だが、彼は単に力自慢というわけではない。シンプルな力だけで言えば、おそらく過去の対戦で彼を上回る相手はいた。

 では、井上はなぜ圧倒的な成果を挙げられるのか。そのワケは彼と実際に対峙し、リング上で屈してきた敗者の言葉を振り返ると、より鮮明に浮かび上がってくる。

「イノウエは素晴らしい選手だと思う。強い選手だ」

 そう語ったのは、前WBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(米国)だった。昨年7月に同級に転級後初の公式戦となった井上の前に立ちはだかった「難攻不落の王者」も結果は8回TKO負け。最後は左ボディーからの右ストレートでぐらついたところで、追撃の左フックを被弾し、力なくリングに沈んだ。

 難攻不落と言われた王座から落ちたフルトンは、試合後の会見で井上への意見を求められ、「試合中のボディーへのジャブがほとんど見えなかった」と告白。そのうえで「彼はパワーというより、その(パンチの)タイミングなんだと思う。自分自身もそこまで彼がどういう動きをするか前もって考えていなかった」と続けた。

 技術力を評価するのはフルトンだけではない。過去には防戦一方となった元王者も見出していた。

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