井上尚弥への日本開催批判は「時代遅れ」 伝説的重鎮アラム氏が断言「なぜアメリカに来てまで後退を選ぶのか」
敵なしの強さを誇る井上に飛んだあらぬ批判にボクシング界の伝説も黙ってはいなかった。(C)Getty Images
プロキャリア26戦無敗23KO。この圧倒的な戦績が「怪物」の異名で尊敬を集める井上尚弥(大橋)の凄みを何よりも物語る。
いまや、各国メディアや識者が厳選するパウンド・フォー・パウンドでも1位、ではなくともトップ3以内に位置付けられる。ゆえに井上の世界的な声価は誰もが認めるところではある。
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文字通り敵なしの強さは十分に証明している。しかし、そんな井上にあらぬ批判が飛んだ。それは去る現地時間4月12日に、米ボクシング専門YouTubeチャンネル『ProBox TV』に出演した元世界ウェルター級王者2団体王者のショーン・ポーター(米国)氏が放った言葉だ。
21年6月のマイケル・ダスマリナス(フィリピン)とのWBA・IBFバンタム級タイトルマッチを行って以来、5戦続けて日本での興行を実施している井上に、ポーター氏は「彼がボクシング界で、世界最高のスターになりたいならこっち(米国)での試合が必要だ」と指摘。「海を渡り、アメリカに来て、アメリカ人を倒して、ファンに注目してもらわなければならない」と断言した。
元世界王者の指摘がSNSを中心に広く拡散されると、母国開催を貫く井上に対しては厳しい意見が噴出。「ボクシングの本場に来て、防衛してこそ一人前」と言わんばかりに、“アメリカ進出”を求める声が相次いだ。
もっとも、批判の声が強まろうと、井上の陣営にブレはない。契約を締結する米興行大手『Top Rank』のCEOで、名プロモーターの一人であるボブ・アラム氏は「時代遅れだ」と周囲の風潮を一蹴している。
元世界ヘビー級王者のモハメド・アリ(米国)や元世界6階級制覇王者(8階級制覇王者とも)マニー・パッキャオ(フィリピン)ら数多の名手たちのプロモートに携わり、業界の酸いも甘いも知る。そんな伝説的な91歳は、米メディア『Boxing Scene』の取材で「イノウエは役者が違うんだよ」と強調する。
「かつては、米国に来ることが大金を稼ぐ最善の方法だった。マニー(パッキャオ)や(WBC世界ヘビー級王者のタイソン・)フューリーには有効だった。イノウエは裕福な国のボクシング界の大スターだ」
近年のボクシング界はグローバル化が劇的に進んでいる。試合中継も動画配信サービスに移行し、放映権料を基にした高額なファイトマネーを用意できるようにもなり、市場は見違えるように拡大。“本場”とされるアメリカはいまだに大きな市場を有しているものの、かつてのように独占的な立場にはない。