体重超過でも平然の違反戦士が称賛される光景に違和感 井上尚弥の「米国進出に価値はあるのか」を再び考える
体重超過を犯しながら、王者を撃破したガルシア。その勝利は異様なものだった。(C)Getty Images
井上がこだわるのは「価値」だ
ここ最近、ボクシング界では、ある論争が起きていた。それは日本での興行開催を続ける井上尚弥(大橋)に対する疑問がキッカケだった。
現地時間4月12日に、米ボクシング専門YouTubeチャンネル『ProBox TV』に出演した元世界ウェルター級王者2団体王者のショーン・ポーター(米国)氏が、「ボクシング界で、世界最高のスターになりたいならこっち(米国)での試合が必要だ」と断言。そして、「目指しているゴールが何なのか、それは俺には本当にわからない。でも、ボクシングでは海を渡り、アメリカに来て、アメリカ人を倒して、ファンに注目してもらわなければならないんだ」と言い放ったのである。
これに様々な反響が相次いだ。米ボクシング専門サイト『Boxing News24』は「イノウエの才能のない無名選手との対戦癖は、彼がアメリカで戦い、レベルの高い相手と対戦しない限り、スターになる助けにはならないだろう」とまで論じた。
井上の米国進出を強く求める人々の言い分は、おそらく「ボクシングの本場に来て、防衛してこそ一人前」というもの。“米国一強”という考えが強く現れていると言えた。
そうした意見に対して井上は真っ向から対峙した。自身のXで「アメリカに来て試合をしろと言うコメントに?????」と投げかけ、こうも続けた。
「今や軽量級の本場はここ日本にある。試合が見たいのなら日本に来ればいい。日本のマーケット以上の物がアメリカにあるのなら喜んで行く。それだけの価値がここ日本にはある」
井上は何よりも「価値」にこだわっている。それは来る5月6日に東京ドームで行われるルイス・ネリ(メキシコ)との一戦に向けた態度からも見て取れる。
過去に体重超過の違反を犯していたネリに対し、「1ポンドでもオーバーすれば絶対にやらない」(大橋秀行会長談)とした井上側は、日本ボクシングコミッション(JBC)とWBCを通じて、事前計量(30日前、15日前、7日前)とVADAによる抜き打ちのドーピング検査も義務付け。揺るぎない興行を成立させるべく、シビアな条件を求めた。
そうした井上の言動を考慮しても、現時点で彼がアメリカに行く価値はないのではないかと思えてくる。それこそガルシアのように重大な違反を起こし、問題児たる行動を繰り返そうと、「勝てば官軍」と言わんばかりに称賛が目立つ場に“真価”はないのではないか。
ボクシングとは何かを改めて考えさせられた。そういう意味では、ガルシアとヘイニーの攻防に価値はあったのかもしれない。
[文/構成:羽澄凜太郎]
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