体重超過でも平然の違反戦士が称賛される光景に違和感 井上尚弥の「米国進出に価値はあるのか」を再び考える

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敵なしの快進撃を続ける井上がアメリカに行く価値はあるのだろうか。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 違和感は禁じ得なかった。現地時間4月20日に米ニューヨークで行われたボクシングのWBC世界スーパーライト級タイトルマッチ12回戦だ。

 大観衆の眼前で勝ち名のりを受けたのは、挑戦者だった。元WBC世界ライト級暫定王者であったライアン・ガルシア(米国)は、31戦無敗で「難攻不落」と言われた王者デビン・ヘイニー(米国)に判定勝ち。コスチュームの王冠を被って「俺が本当に狂ったと思ったのか」と咆哮し、観客を熱狂させた。

【動画】周囲も呆然のビールをがぶ飲み! 大幅体重超過後のガルシアの「奇行」





 そんな25歳に思わず圧倒された。行ってしまえば、興ざめだった。なぜなら彼は前日計量でリミット140ポンド(63.50キロ)を3.2ポンド(約1.45キロ)もオーバーしていたからだ。

 たしかに試合内容は見事だった。ヘイニーに対して序盤から臆せず、打ちに出たガルシアは、7回、10回、11回と3度もダウンを奪取。主導権を握られる場面をあったが、決定打を許さないパフォーマンスを披露した。

 ただ、どうしても“ケチ”が付く。彼を「勝者」として受け入れていいものか。その想いはガルシアの試合後の言葉と複数の現地メディアの反応を目にし、より強くなった。

 事実か否かは不明だが、ガルシアは試合後の会見で「毎日のように酒を飲み、それでも俺は彼を打ち負かしたんだ」と豪語。さらに「月曜も、火曜も、出かけて、飲みに飲んだ。それでどうなった? 勝ったんだよ」と驚くべき言葉を並べた。

 自身の違反に悪びれる様子もないガルシア。そんな彼の快勝に対して、複数の米メディアは好意的に報じた。

 スポーツ専門サイト『Bleacher Report』は「ファイトウィーク中の意味不明な暴言や、体重超過でプロらしくない味を残した」と指摘しつつも、「尊敬する」と断言。さらに元WBC世界スーパーウェルター級王者のセルジオ・モラ氏は「単なる人気だけでは試合に勝てない。勝つには技術と戦略、そして精神力が必要なんだ」と熱弁を振るった。

「ライアン・ガルシアはすべてを持っている。このヘイニーとの試合に向けては、彼の胆力、勇気を見る必要があり、逆境に立ち向かう必要があった。それでも彼はすべてのテストに合格したんだ」

 繰り返すが、パフォーマンスそのものは見事だった。しかし、体重超過という階級制のスポーツにおいて重大な違反を犯した時点で「尊敬する」と言われるほどの賞賛に値するかは甚だ疑問だ。無論、ガルシアとの試合を了承したヘイニー側にも非はあるが、ガルシアの姿に熱狂していたニューヨークには違和感しか抱けなかった。

 これが「ボクシングの本場」なのか、と。

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