米記者たちも期待する井上尚弥の“夢のシナリオ” ラスベガスで感じた日本人戦士による「凄い時代」の到来【現地発】
“巨躯”のドヘニーも寄せ付けず、圧勝した。そんな井上の敵なしの強さは米国でも轟いている。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
「イノウエの試合がまたアメリカで見られるなら楽しみだな」
ラスベガスに集まった多くのボクシング関係者から頻繁にそう声をかけられるようになった。その事実は軽量級の最強王者・井上尚弥(大橋)の知名度の高まりを示しているのだろう。
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ボクシング界は、毎年、メキシコ独立記念日にあたる9月16日の前後に大イベントが挙行されるのだが、今年は14日に米ラスベガス州のT-モバイルアリーナでサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)対エドガー・ベルランガ(プエルトリコ)戦をメインに据えた興行が開催された。その週は米国内のボクシングの主要関係者が一堂に会するのも通例。そこでどれだけ話題になるかは、選手のステータスを推し量る一つのバロメーターでもある。
そうした中で、井上の名は小さくない話題となった。
去る9月3日のテレンス・ジョン・ドヘニー(豪州)戦後、米興行大手『Top Rank』の御大でもあるボブ・アラム会長が来春に井上が久々に渡米戦を行う可能性について明言した。重鎮の放った言葉は米国内に届いており、もちろんいまだ具体化はしていないが、そんなシナリオが本当に実現すればボクシング関係者を騒がせるイベントになりそうという機運は高まっている。
「イノウエはまだ世界最高レベルの力を保っていて、次にアメリカに来て試合をしたらもっと盛り上がると思う。前回はまだ知名度が低く、ラスベガス進出時もコロナ渦もあってそこまでのイベントにはならなかった。ただ、今では多くのファン、関係者が井上の強さを認識している。渡米すればYouTube系メディアも大騒ぎするはずだ」
そう熱っぽく語る米メディア『Fightnews.com』のミゲール・マラビジャ記者もまた“モンスター再襲来”を楽しみにする米メディアの1人だ。
井上は2020〜21年にラスベガスで2度、2017年にカリフォルニア州カーソンで1度、渡米しての試合開催を実現させている。ただ、2017年のアントニオ・ニエベス(米国)戦はアンダーカードの一角。さらにラスベガスでのジェイソン・モロニー(豪州)戦、マイケル・ダスマリナス(フィリピン)戦は、いまだ新型コロナによるパンデミックの渦中であり、プロモーションは不十分。ゆえに井上の知名度もコアなファン限定と言える範囲であり、業界内の評価に追い付いているとは言えなかった。おかげで彼の米進出はマニアックな出来事に止まった印象だった。
ただ、最近は毎試合がアメリカでもライブ配信されるようになり、視聴は容易になっている。リングマガジンのパウンド・フォー・パウンド(PFP)で一時1位に浮上、2階級での4団体制覇、アメリカ人の世界王者だったスティーブン・フルトンへの圧勝、東京ドーム興行の成功といった華々しい活躍もあって、日本が産んだモンスターの名は世界のボクシング界に完全に轟いた感がある。