「短パン謝罪」ノムさんの天敵!?元楽天・リンデン 退団後は米独立リーグで吉田えりと対戦し2打数… 【記憶に残るプロ野球助っ人列伝】
数字で評価されるのがプロの世界。しかし、記録だけでなく、記憶に残る男たちがいます。2009年途中から2010年の2シーズン、楽天でプレーしたトッド・リンデン外野手もその一人です。
スイッチヒッターで、メジャー通算116安打、8本塁打。3Aでは元阪神の井川慶から日本球界の基礎知識も伝授されたといい、入団会見では「レベルの高い日本で成功したい。打つだけじゃなく、守備や走塁などすべての面で勝利に貢献したい」と殊勝にアピールしていました。
2009年、球団創設5年目を迎えた楽天は快進撃を続け、2位へと躍進。初のクライマックスシリーズと足を進めます。と同時に、球団側は就任4年目を迎えた野村克也監督の任期を「今季限り」と明言。何とか日本シリーズへと進出し、意地でも契約延長を勝ち取りたい野村監督側の「執念」が話題を集めたシーズンでもありました。そんな勝負の秋。リンデンの「造反」がスポーツ新聞の1面を飾ることになります。
「短パン謝罪事件」からの電撃和解 からの…
対立が表面化したのは10月11日のことでした。登録を抹消されたリンデンでしたが、その理由は「首脳陣批判」というから、穏やかではありません。名将は言いました。
「監督侮辱罪というか、人間失格。人間として、組織の中で生きる資格がないと判断した。許すわけにいかない。顔も見たくない」
事の発端は前日10日、札幌ドームでの日本ハム戦での一幕でした。リンデンは苦手の技巧派サウスポー・武田勝が先発することでスタメン落ちましたが、6点を追う九回2死二塁、代打で起用されました。点差の離れた場面での起用にプライドを傷つけられ、試合後は会見中の野村監督に「アリガトウ」と日本語で叫んだのです。知将への強烈な皮肉。舞台裏ではロッカーを蹴り飛ばし、「クレイジーだ」と不満を爆発させていたといいます。
それから3日後。ポストシーズンに向けての大事な時期ゆえに、沈静化を図りたいところでしたが、事態は思わぬ方向へ進んでいきます。Kスタ宮城での全体練習前、ノムさんはリンデンと会談を行うことにしたのですが、何とリンデンの服装はTシャツにサンダル履き、短パン姿。謝罪に訪れたリンデンに「その目は何だ。反省の色なし」と決めつけ、話し合いはわずか10分で決裂しました。楽天の球団史に語り継がれる「短パン謝罪事件」です。
日頃から「茶髪やヒゲは心が乱れている証拠」と持論を展開し、みだしなみや礼節を重んじるノムさんだけに、和解がなされるはずの場は、一気に修羅場と化したのでありました。
もうチームにリンデンの居場所はないだろう…誰もがそう考えていたイーグルスナインでしたが、首位・日本ハムとのパ・リーグクライマックスシリーズ第2ステージ直前のKスタ宮城では奇跡の瞬間が訪れます。なんとリンデンが野村監督に2度目の謝罪を行い、電撃和解したのです。
先日の短パン姿とは打って変わって、リンデンがネクタイに黒スーツ姿で登場すると、ノムさんも「おお、今日はちゃんとした格好してきたな」と笑顔で迎え入れました。助っ人も「2軍で調整してきて、自分の行った言動を後悔していました」と反省の弁。最後はガッチリ握手を交わしました。泥沼のけんか別れを経て、急転直下の仲直り。仲良きことは美しきかな。「野村・リンデン劇場」はめでたし、めでたし、となったわけです。