「梅野サイクル安打アラカルト」、阪神では何年ぶり何人目?8番打者としては?
骨折を負いつつ、これだけの珍事、偶然が重なった偉業は史上初めてだろう。
阪神・梅野隆太郎捕手(27)が4月9日のDeNA戦(甲子園)でサイクル安打を達成した。三塁打、右安打、三ゴロ、本塁打で迎えた8回の第5打席で二塁打を放った。
チアリーダーから花束を受け取っても、本人にとっては何のことやら。快挙達成に「表彰されるまで、まったく気づいていなかったです」と驚いた。
記録への意識がなかったために、8回のドラマがあった。先頭打者で1号ソロを放ち、サイクル安打に王手をかける。その後、2死満塁で福留の右飛でチェンジかと思われたが、ソトが落球。走者一掃のタイムリー失策となり、打者が一巡。本来なら回ってこないはずの打席が梅野に回り、チャンスが巡ってきた。
あと二塁打が出れば、快記録となる場面。2死一、二塁で山崎康から右中間を破る当たりを放った。ところが梅野はスピードをゆるめることなく二塁を蹴り、三塁へ向かった。三塁打となれば、偉業は水の泡。ところが一塁走者ナバーロが本塁で憤死。梅野が三塁ベース到達前で、記録は二塁打となった。走塁死に救われた形となり「ナバーロのおかげ」と笑わせた。
サイクル安打達成にもっとも難しいといわれる「三塁打」もラッキーだった。2回の第1打席で右飛かと思われた打球をソトが落球。一度は「失策」の記録がついたが、その後「三塁打」に訂正された。甲子園の魔物がソトを襲ったのか、結果的に2つの守乱が記録をアシストする形となった。
「サイクル安打」超えで、大記録を逃したケースもある。松井秀喜(巨人)は01年5月23日のヤクルト戦で、本塁打、二塁打、三塁打を放った。あとシングルヒットが出れば達成だったが、第5打席で長打を放って二塁まで進塁。せっかくのサイクル安打をフイにした。
梅野は2日巨人戦で左足薬指を骨折していた。その後も志願して強行出場し、痛みを抱えながら激走してのサイクル安打だった。記録を意識することなく、ケガをおして目の前のプレーに全力を尽くしたガッツマンへ、野球の神様からのご褒美だったのかもしれない。