酷使した膝は限界を超えていた 岡崎慎司が現役最後の瞬間まで“全力”を貫いたワケ「そういうのが嫌いだった」【現地発】

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引退試合でも無理を承知で身体を張った岡崎。そのパフォーマンスは際立っていた。(C)Getty Images

「全力」を出し続ける才能はワールドクラス

 思えば、岡崎はいつだってそうだった。

 マインツ時代にクリスティアン・ハイデルSDが「シンジを壊すことも、止めることもできないよ。それくらい彼は頑丈で、いつも最大限のパワーで戦ってくれる。センセーショナルな選手だ」と語っていたことを思い出す。彼はただ、ゴールを取るだけの選手ではない。どんな試合でも懸命に走り、パスがずれてもボールを奪い返すべく身体を張り続ける。

「止まってる状態から出て行こうとすると瞬間的には動けなくなる。自分のリズムとして守備から入るというのは大事な部分なのかなと思います」

 そう話していたことがあった。でも、これは誰にでもできる芸当ではない。皆、疲れが出てくると足を止めたくなるのが必然。頭の回転も遅くなり、心も弱ってくる。でも、岡崎にはそれが起こらない。

 それこそ、「全力」を出し続けられる才能に関してはワールドクラスと言えるかもしれない。その献身的な姿には味方を奮い立たせるほどのエネルギーがほとばしっていた。マインツ時代のチームメイトだったダニエル・ブロジンスキは「試合時間が80分をすぎて少し力がなくなってくると、シンジを見て元気を取り戻すんだ。93分になっても、どんなボールにも、どんな競り合いにも飛び込んでいくのは本当にすごい!」と絶賛していた。

 元気を、勇気を、希望を与えてくれる何かを持った人。だから日本でも、ドイツでも、イングランドでも、スペインでも、そしてベルギーでも活躍できた。そして、ファンから、チームメイトから、クラブから愛される存在に、岡崎はなったのだ。

 一つひとつのプレーをダイナミックに連続して繋げていく。プレーが終わってからも足は止まったりしない。岡崎は、身体が動かなくなるその瞬間まで、常に次へ、そのまた次へと、全力で走り続けた。

 そんな魂のストライカーがピッチに別れを告げた。

 気づけば、雨脚は強くなっていた。私は、岡崎の魂が放つその熱さを前に寒さを忘れて最後の雄姿を見つめ続けていた。

 岡崎は周りの人間の心を燃やす力を持っている。いつかその力でもって、大きな何かを成し得てくれると信じている。





[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]

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