ドラフト候補と呼ぶのは早計か 6年間のブランクを埋め、六大学ベストナインに輝いた慶大・清原正吾の“現在地”

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慶大のレギュラーとして奮闘した清原。彼の存在は今春の大学球界で小さくない反響を呼んだ。(C)Getty Images

6年間も野球から離れた男の快挙

 6月10日から6日間に渡って行われた全日本大学野球選手権は、青学大が連覇を達成。大学野球の春の公式戦は全日程が終了した。

 そんな今春に小さくない話題となったのが、東京六大学の一塁手部門でベストナインに輝いた清原正吾(慶応大)だ。西武、巨人、オリックスでプレーし、NPB通算525本塁打を放った和博氏を父に持つ彼はいわゆる“二世選手”。そのバックボーンもあり、かねてから何かと話題になる存在だったが、今春は表彰を受け、よりクローズアップされる機会が多かった印象があった。

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 しかし、彼に関して何よりも驚かされるのが、その経歴。小学校までは軟式のクラブチームで活躍していたものの、中学ではバレーボール部、高校ではアメリカンフットボール部に所属。野球からはなんと6年間も離れていたのである。そんな選手が全国でも1、2を争うレベルにある東京六大学でベストナインを受賞するというのはまさに快挙。偉大な父親からの遺伝というのももちろん影響していると思われるが、それ以上に本人の努力の賜物と言えるのではないだろうか。

 ただ、この結果をもたらしたのには、いくつかの要因がある。

 まず大きかったのはチーム事情だ。慶応大は他の強豪大学と異なり、スポーツ推薦がなく、高校時代に実績のある選手の多くは総合型選抜、いわゆるAO入試というシステムで学業以外の部分を評価されて入学している。同大学のAO入試は昔から難関として知られ、古くは“昭和の怪物”と言われた江川卓や、夏の甲子園で優勝投手となった森尾和貴なども不合格となっている。

 そして清原が高校3年時にはさらに難易度が上昇。高橋宏斗(現・中日)など多くの有望選手がAO入試の合格が叶わなかった。現在、慶応大に所属する4年生を見ると、甲子園出場を経験している選手は、投手の浮橋幸太(富岡西出身)のみ。その浮橋も1年の浪人を経験しての入学である。3年生以下も同様の傾向は続いており、附属高校の1つで、神奈川県でも屈指の強豪である慶応高校野球部出身の選手に頼る部分が強くなっているのだ。

 さらに清原の3学年上には正木智也(現・ソフトバンク)、2学年上には萩尾匡也(現・巨人)、1学年上には広瀬隆太(現・ソフトバンク)、栗林泰三(現・JR東日本)と常に長打力のある右打者が所属していたが、今年のチームで実績のある右バッターは本間颯太朗(4年・慶応高)くらい。今春のリーグ戦におけるチーム成績を見ても、チーム打率.215はリーグ5位の数字であり、早稲田大の.304、明治大の.301と比べても大きく引き離されていることがよく分かる。そんな打線の状況も、体格に恵まれて長打力のある清原の抜擢に繋がったと言えるだろう。

 ただ、いくらチャンスを与えられても、モノにできない選手も少なくない。清原がレギュラーに抜擢した首脳陣の期待に“結果”で応えたのは見事という他ない。

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