一夜にして全てを手に入れた扇久保の勝因は?かつてリング上で公開プロポーズした元PRIDEファイターが祝福解説
那須川天心のRIZINラストマッチやバンタム級トーナメントの決勝、ライト級タイトルマッチなど豪華カードが行われた2021年大晦日の「RIZIN.33」。かつて大晦日のリングでピーター・アーツに勝利を収めた経験を持つ元総合格闘家の大山峻護さんに、同大会の感想を聞いた。
大山峻護さん
――RIZINバンタム級トーナメントは扇久保博正が優勝候補の井上直樹選手、朝倉海選手を撃破して頂点に立ちました
大山:見事に前評判をひっくり返しましたね。表情からして一人だけ違いました。確信しているというか、ゾーンに入っていましたね。井上直樹選手や朝倉海選手という格闘技界を引っ張る若き優勝候補を倒しての優勝ですからね、すごいものを見せてもらいました。
扇久保選手は1年前、朝倉海選手に1ラウンドKO負けを喫していて、年齢的にもそこで諦めてしまってもおかしくなかったはずです。でも扇久保選手はそこから再び立ち上がって、全部の評価を覆して1番になるという、格闘家、アスリートとして最高のメッセージを見せてくれました。泣きたいほど苦しいことや、投げ出そうと思ったことは何度もあったと思いますが、マイナスの経験を力に変えて、より強く、進化して這い上がってきた。コロナ禍でみんなが苦しい思いをしている中で、元気と勇気を与えることができたんじゃないかなと思います。
――扇久保選手は具体的にどういうところが上手かったのでしょうか?
大山:相手の良さを徹底的に潰していましたね。「際(きわ)」を取るのが上手かった。立ち上がった瞬間とか、打撃が終わった瞬間とか、そういう間を自分の方向に引っ張っていくのが巧みでした。長年培ってきた経験からなせる技ですね。
――井上選手、朝倉選手への対策はどうでしたか?
大山:あらゆる想定をして、徹底的に対策をしてきていたと思いますが、それが見事にドンピシャでしたね。作戦だけでなく、今まで培ってきた経験も全てがどハマりしていました。それと、扇久保選手の覚悟でしょうね。何がなんでも勝つというど根性。バケモノ級の選手たちを相手にフルラウンド戦っても、まだやれそうな表情でしたからね。どれだけこの試合にかけて準備してきたのかわかります。