「いつの間にか勝ってる」――阪神快進撃の裏に岡田彰布がこだわった“普通”あり 失策の”質”に表れる強かったワケ
昨秋のキャンプから守備の課題克服に着手してきた岡田監督。その意識改革はチームに浸透した。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
阪神にとって18年ぶりの歓喜は「普通」を求め続けた勝負師によってもたらされた。
9月14日に本拠地・甲子園で行われた巨人戦で、阪神は4-3と勝利。今季最多となる11連勝を達成するとともに、2005年以来18年ぶり6度目のリーグ優勝を果たした。
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4万2648人のファンが詰めかけ、超満員となった甲子園。しかも、相手は阪神にとって宿命のライバル、巨人。これ以上ない舞台だった。否が応でも緊張が高ぶる一戦だったが、選手たちはいつも通りのプレーを披露。6回に大山悠輔の犠牲フライと佐藤輝明の2ランホームランで先手を取ると、以降はソツのない守備で相手の反撃を抑え、マウンドに歓喜の輪を作った。
最後も当たり前のように接戦をモノにして優勝を手繰り寄せた。これは、就任会見時に「いつの間にか勝ってる。勝とうと意識するのは良くないと思うんですけど、9回終わったら勝ってた。サラッと勝ってたみたいな」チームを標榜した岡田彰布監督の勝負感が浸透した結果だ。
普通に勝つ、当たり前に9イニングを戦い終える。そんなこだわりを平成生まれの虎戦士たちに伝えた65歳の名伯楽が、開幕前から気にかけたのが「守備」でもあった。矢野燿大前体制の最終年となった昨シーズン、チームは泥沼の9連敗を喫するなど散々な1年を送った。そのなかで悪目立ちしたのが、両リーグトップの失策数(86)を記録した守り。元来、守り勝つ野球を心掛けてきた岡田監督にとって、メスを入れるべき部分だったのは言うまでもない。
昨年11月の再任決定後にCoCoKARAnextが行った独占インタビューで、岡田監督は通年の課題であった失策数の多さについて、興味深い持論を語ってくれていた。「負けるとエラーの数とかもクローズアップされる。だから数の意識はしてない」という指揮官がこだわったのは、その背景にあった。
「今年(22年)は、リリーフ陣で防御率1点台の投手もいたけど、そのブルペン陣で借金が10個あった。いかに大事な場面で、エラーが絡んでいるんじゃないかと見ている。大事なところでゲッツーを取れずに残ったランナーが得点になったりして。自責点にはならないけど負け投手になってしまう」