MLBの“超一流”バウアーがDeNAにもたらした「財産」 ハマ戦士たちの本音「やっぱり他の選手とは違う」
球界をざわつかせた“事件”。その時、バウアーは?
思うように勝てなくなった時期、バウアーは「勝つため」に投手コーチたちの意見も取り入れるようになった。(C)KentaHARADA/CoCoKARAnext
再起に向けて前を向いたバウアーは、オリックスの山本由伸らNPBの好投手たちのプレー動画を食い入るように分析。自身の投球パフォーマンスを改善し、その後の快投に繋げた。
専属キャッチャーの伊藤光は当初、「真っ直ぐは低めだと回転効率が悪いので投げていないと聞いていましたし、高めの真っ直ぐと低めの変化球のスタイルでアメリカでは通用していた」とメジャーでの経験則に沿ったピッチングで挑んでいたと証言。
しかし、「日本ではバッターが真っ直ぐを打ちに来ていても、変化球を拾ってくる。向こうでは変化球を低めに投げれば空振りが取れていたのに、自信を持って投げていったボールが拾われる、しかも長打になる」と理解してからのバウアーは、コーチやアナリストの意見も積極的に取り入れたという。そして「低めの真っ直ぐ」がポイントとの答えを導き出し、結果を出した。
また、「ノーストライクは真ん中、1ストライク後はちょっと外、2ストライク後は端という感じで投げないと、ピッチングフォームが崩れる」というこだわりがあったが、「1ストライク目から(要求した)コースに投げてくれた。そこは変わりましたね」と勝つためにスタイルを変化させた。サイ・ヤング賞投手としての“プライド”よりも“勝利”にフォーカスする姿に、女房役が「なんとかしてあげたい」と口にしていたのは忘れがたい。
こんなこともあった。7月1日の中日戦に先発したバウアーは、不運な当たりや自身のエラーもあり、明らかにフラストレーションが溜まり、顔面は紅潮。極めつけはランダウンプレーを味方守備陣がミス。これに憤怒した32歳は、グラウンド内で「Fワード」を連発した。
球界をざわつかせた“事件“。しかし、この時の言動も「優勝するチームの野球ではなかった」との思いが現れたから。本人も特定のミスをしたチームメイトに向けられたものではないと試合後に説明した。この言葉を裏付けるように、主砲の牧秀悟も「毎度毎度自分のやるべきこと、長いイニングを最少失点で投げてくれてますし、バッター陣がそれに応えられないときでもゼロに抑えてくれたり、とても頼もしいです」とコメントしている。
バウアーの勝利を追い求める姿勢がチームの原動力になった。そんな名投手の真剣さは、若手たちにも波及した。
ファームで調整中していた際にバッテリーを組んだ益子京右は、「準備段階や試合への臨み方がやっぱり他の選手とは違う」と驚愕。さらにドラ1ルーキーの松尾汐恩は「自分の考えをすごく持っている。わかっていても打てない真っ直ぐだったり、スライダーは本当にすごい」と目を丸くする。若手たちにも惜しみなく経験を伝授したバウアーは、1軍だけでなく、チーム全体に“メジャーの風”を吹かした。
最終的に19登板で130回2/3を投げ、10勝4敗を記録したバウアー。月間MVPに2度も選ばれた堂々たる成績はもちろん、DeNAには「ベースボール・サイエンティスト」の遺伝子も刻み込まれたに違いない。
[取材・文:萩原孝弘]
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