「スカウトに見る目はあるが、くじ運がない」巨人が逃した2人の強打者
甲子園では選抜高校野球大会が開幕し、4月からは大学野球の春季リーグ戦もスタート。社会人野球の公式戦も本格化し、秋のドラフト会議に向けて金の卵を発掘する12球団のスカウトたちにとっては、ペナントレースと並行してもう一つの「戦い」が展開されます。
・今すぐ読みたい→
プロ野球選手はなぜタバコを吸うのか? https://cocokara-next.com/athlete_celeb/why-smoking-professional-baseball-player/
選抜甲子園を視察中のある老スカウトは言います。
「私達の仕事に関しては2006年から07年に大きな変革がもたらされました。逆指名制度の廃止です。それまでは大学や社会人の目玉選手から逆指名を取り付けるために、この時期もオープン戦や練習に密着して熱意をアピールしなきゃいけないから、選抜甲子園も十分に視察できなかった。今は当日のクジで全てが決まるからね。でも、将来性をしっかり見定めるという本質的な任務は変わっていません」
スカウトは激務です。一年中、風雨にさらされて担当エリアを飛び回り、特に4月以降はドラフト当日までまとまった休みもありません。そして、獲得した選手が入団後に活躍したら、監督やコーチの手柄。逆に活躍できなかったら…。
「スカウトの見る目がない」と責任を押しつけられることもしばしばなのです。
一例を挙げましょう。
ここ数年、巨人のドラフト1位入団選手はけが人が多かったり、スケール不足だったりと、「スカウトの調査不足」といった記事が夕刊タブロイド紙では散見されます。
17年の鍬原拓也(中央大)、19年の堀田賢慎(青森山田高)と、戦力になれていない現状もあります。
しかし、スポーツ紙のアマ野球担当記者はこう語気を強めるのです。
「確かに二人はともに右肘の手術をするなど、リハビリの途中です。ドラフトの際は『1位じゃなくてもよいのでは?』との声が他球団のスカウトから聞かれたことも事実でしょう。しかし、じゃあ巨人のスカウトに見る目がないのかというと、それは誤解です。見る目はある。ただくじ運がないだけなのです」
例えば鍬原を「外れ外れ1位」で指名した17年は「清宮ドラフト」と呼ばれ、早稲田実業の清宮幸太郎に7球団が競合。高校生ではPL学園・福留孝介に並ぶタイ記録でした。これを外した巨人が指名したのは、今では球界を代表するスラッガーに進化した九州学院高・村上宗隆だったのです。
楽天も含む3球団の抽選の末、村上はヤクルトへ。現在の活躍については説明するまでもないでしょう。