髙阪剛『UFC241』の展望を語る「今度も、両者血だらけの殴り合いになる」
――身長もリーチも、ミオシッチが上回っていることがその理由ですね。
「でも、コーミエを中に入れてしまったことで、ジャブももらってしまい、それが結果的に致命傷になっていったわけです。コーミエのジャブってすごく強いんで、フィニッシュブローは右フックでしたけど、その前の何発かのジャブで、ミオシッチは軽い脳震盪を起こしていたんじゃないかと思うんです。」
――ジャブが入り出した時点で、試合は半ば決していたと。
「で、その距離にならなければコーミエのジャブはもらわないので。距離の設定を長くとれるのはミオシッチの方ですからね、それをやられたらコーミエはつらくなるんじゃないかと思います。」
――コーミエにとっては、前回より苦しい展開が予想されるわけですね。
「そうだと思います。また、前回はサミング(アイポーク)があったというのも、ひとつのポイントだと思うんです。しかもあれは、コーミエが相手の突進を止めようとして、手を前に出したときに指が目に入ってしまったのではなくて、フリッカージャブ的にパンチを出した時に指が開いていて、それが目に入ってしまったんですよね。」
——事実上の「目潰し攻撃」と同じことになってしまったわけですね。
「だから、ミオシッチはそうとう目玉のダメージが大きかったと思うんです。試合再開後、ミオシッチが不用意に前に出てしまいましたけど、もしかしたらダブルビジョンで距離感がわからず、それでコーミエの距離に出ていってしまったことも考えられますからね。とにかく、そういったことも含めて、ミオシッチとしては近い距離になりたくないですね。」
――では、ミオシッチが自分の距離で闘うことができるかどうかが、この試合のポイントだと。
「そこは非常に大きいと思いますね。同じ轍は踏みたくないでしょうから。」
写真:Getty Images
――『UFC241』でもう1試合、タイトルマッチ級に注目されているのが、ネート・ディアスvsアンソニー・ペティスの一戦。ネートはコナー・マクレガー戦(16年8月20日『UFC202』)以来、じつに丸3年ぶりの試合なんです。
「その間、べつに大きな手術をしたとか、そういうわけじゃないんですよね?」
——いや、この3年の間にジョルジュ・サンピエール戦やダスティン・ポワリエ戦が噂には上がったんですが、ポワリエの負傷あったり。あと、ネートがマクレガー戦ですっかりセレブになったこともあり、なかなか交渉がまとまらなかったようです(笑)。
「そういうことなんですね(笑)。」
——ですから、ファンにとっては本当に待望のネート復帰戦となります。
「そうなりますね。また、相手がアンソニー・ペティスというのが絶妙ですよね。お互い激闘型なので、まずハズレはない試合だと思うので。いまのネートの状態がどうなのかわかりませんけど、昔のまんまのネート・ディアスだったら、間違いなくいい試合になるでしょうね。」
——両者ともに喧嘩上等というタイプです。
「そうですね。両者ともに打撃でガンガンくるタイプですけど、違いで言えば、アンスニー・ペティスの方がパンチにしても蹴りにしても、時たま変則的な動きを仕掛けてくるんですよ。前回のスティーブン・トンプソン戦なんかでも、かなり押されていた展開だったのに、スーパーマンパンチで逆転KO勝ちしていますからね。それもケージを後ろに背負いながら、ケージの縁を踏切に使ってより強いスーパーマンパンチを出していたんです。」
——ベンソン・ヘンダーソン戦で見せた、「ショータイムキック」だとか、そういう意表を突く大技を出してきそうですね。
「で、ネートは『そんなの気にしねえよ』って感じで前に出てくるタイプだから、そういう打撃でネートを倒すようなことがあったら、またペティスの株があがると思いますね。」
――あとポイントとなるのは、ローキックの攻防でしょうか。ローを蹴られるのは、ネートの弱点でもありますから。
「ネートはそういった蹴り技に対しては、自分でもあまり出さないし、対処もそんなにしないんですよね。」
写真:Getty Images
――痛くても我慢する、という(笑)。
「その一方で、ネートは一見雑そうに見えながら、すごく効くパンチを持っていますからね。手打ちのように見えるパンチがどんどん効いていって、相手はダメージを蓄積してしまうという。だから、そういう強みと弱みの両方があるネートを、ペティスがどう攻略していくかが、見ものですね。」
——ペティスは、このところ戦績こそ勝ったり負けたりを繰り返していますが、勝っても負けても毎試合のようにパフォーマンスボーナスを獲得しています。
「それで毎試合、血だらけになっているんですよ。」
——それは両者ともに言えるかと思います。
「だから今度の試合も、両者血だらけの殴り合いになるんじゃないかな。この試合はセミ前ですよね? メインイベントの前に、もうオクタゴンのマットが血まみれになってるんじゃないかと(笑)。」
——それぐらいの「血闘」になるだろうと(笑)。
「だから『UFC241』が行われる日は、一般的には盆休みの最終日ですよね? だから一般サラリーマンの人も、この試合を見たら休みボケが吹っ飛んで、『俺もやったるぞ!』と思うような試合になるんじゃないかな。ヤクザ映画を見たあと、肩で風きって歩くようなことが起こりそうな気がします(笑)。」
[取材/文・堀江ガンツ]
◆◆WOWOW『UFC-究極格闘技-』放送スケジュール◆◆◆
『生中継!UFC‐究極格闘技‐ UFC241 in カリフォルニア ヘビー級王者コーミエが元王者ミオシッチと再戦!王座防衛か?奪還か?』
8/18(日)午前11:00[WOWOWプライム]生中継
※終了時間変更の場合あり
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)
8/24(土)午前9:00[WOWOWライブ]リピート
(WOWOWメンバーズオンデマンドにて同時配信)
【対戦カード】
<ヘビー級タイトルマッチ>ダニエル・コーミエ vs スティーペ・ミオシッチ
<ウェルター級>アンソニー・ペティス vs ネート・ディアス
【出演】
解説:髙阪剛、堀江ガンツ
実況:髙柳謙一
進行:渋佐和佳奈
■詳しくはWOWOW番組オフシャルサイト(
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