遠藤航はなぜリバプールで活躍できているのか? 名スカウトを唸らせた独時代の転機「ワタルにどれほどの価値あるか」【現地発】

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いまやリバプールのレギュラー格へと成長を遂げた遠藤。飛躍の背景には本人の飽くなき向上心があった。(C)Getty Images

まだまだ夢の世界だったプレミアリーグ

 遠藤は様々な計算を自分で整理して、プラスの方向に積み重ねていける選手だ。全てが別々なのではなく、しっかりと消化、そして吸収ができる。そしていつでも将来的に自分へ必要になる課題に対するチャレンジを怠らない。

 CBからボランチでのプレー機会が増え始めた頃、「意識して取り組んでいるプレー」について明かしてくれたことがある。

「海外にきて自分の中で意識しているのは、シンプルにワンタッチでプレーすることも必要ですけど、相手のプレッシャーをはがして縦につけるようなプレー。もっとレベルが上がってくると中盤の選手にはそういったプレーが求められると思うので。

 相手のプレッシャーがきてもビビらずに前に運んだりというプレーは自分の中で意識している。すごく楽しんでプレーできているし、こういうプレッシャーがあるなかで、球際でバチバチ戦うっていう試合を求めてここにきた。成長になると思う」

 今でこそプレミアリーグでもボール奪取後に鋭い縦パスを味方につけたり、相手のプレスをかいくぐって次の局面に展開するシーンは当たり前のように見られる。遠藤はそうなるための取り組みをずっと以前からしていたのだ。

 着実に成長していく遠藤。そんな日本代表のキャプテンについて、ミスリンタートSDが次のように話していたことを思い出す。

「ワタルは我々の試合運びにおける重要なファクター。チームに安定感をもたらしてくれる選手だ。他の選手がどのように守備をすべきかをオーガナイズし、1対1の競り合いでものすごくインテリジェンスに対応する。ボールを奪い取ると、素晴らしい技術で素早い切り替えに貢献してくれる。我々のリーダーだ。心臓部の一つ。コミュニケーションとは、ただピッチで叫びあってればいいわけではない」

 どんな選手にも得意不得意がある。苦手だからといって改善に取り組まなければ、いつまでたっても何も変わらない。課題を明確に把握し、スキルアップの道を模索して、勇気をもって実践していく。

「やっぱりドイツはひとつの球際の強さも強いなって思うし、これがブンデスリーガ(1部)だったらもっとレベルは上がるのかなとか、スピード感が上がるのかなって感じながらプレーしています」

 ドイツでの2部時代をそう語っていた当時の遠藤にとって、ブンデスリーガも、プレミアリーグもまだまだ夢の世界だったかもしれない。

 だが、そこからわずか数年で、遠藤はブンデスリーガで戦うチームのキャプテンを務め、苦境から救い出すような活躍を何度も見せ、昨夏にはリバプールへと羽ばたいた。そして、プレミアリーグで出場機会を得るだけではなく、コンスタントにスタメンに名を連ねている。これは驚くべきステップアップと言える。

 誰でもいきなり完璧なプレーはできない。しかし、そうした状況でミスを恐れれば、成長にはつながらない。遠藤の歩みを振り返ってみると、挑戦の大切さに改めて気づかされる。





[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]

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