男子バレーはなぜ強くなったのか?10年前にスタートした日本代表強化の「舞台裏」

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 それまでは、高さのある相手に対して「スピード」で勝負しなければならない、といった呪縛とも言うべき考えが先行し、トスの速さを追求してきた。しかし、世界のスタンダードはトスの速さではなく、複数の選手が同時に攻撃へ入り、相手ブロッカーに対して「どこから来るかわからない」と意識を分散させてブロックの枚数を軽減させる方法だ。

 世界と異なる日本オリジナルを追求するばかりでなく、世界と同じバレーボールを当たり前と落とし込み、そこにプラスして日本の長所を加える。攻撃面において特に顕著だったのが、それまではサイドに頼ることが多かったのが、打数の少なかったミドルブロッカーの速攻と、バックセンターから速いスピードでのバックアタックを仕掛ける回数が増えたことだ。この攻撃を得意とする関田誠大、藤井直伸という2人のセッターが軸となり、高い攻撃力を持った攻撃陣を活かした。

 チーム発足当初は石川、柳田が攻撃の二枚看板だったが、そこに新戦力としてオポジットの西田有志、五輪直前の20年にはディフェンス力にも長けた髙橋藍が加わり、ミドルブロッカーも山内だけでなくバランスに優れた小野寺太志が台頭。リベロにはブラン氏が「世界一のリベロ」と称賛する山本智大といった、それぞれの「個」が長所を発揮し、東京五輪で29年ぶりのベスト8進出を果たした。

 中垣内前監督が東京五輪後のアジア選手権を最後に勇退し、同年にコーチのブラン氏が監督に就任。17年から掲げてきたコンセプトは変わらず、飛躍的にレベルアップを遂げる世界と同様に、同じ目線で何が必要で、何を高めるべきかと着実に強化を重ねてきた結果が今に至っている。

 新たな挑戦を恐れず、踏み出し、信じて歩み続け、これと決めたら、継続は力なり、とばかりに貫く。男子バレー日本代表の強さは、その最たる証だ。





[文●田中夕子(フリーライター)]

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