「サッカーが難しい、しんどい」柿谷曜一朗の発言に共感する人も多いのでは?“息苦しさ”のある現代サッカーにドロップキック!

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柿谷の言葉はサッカー選手の本音だろう(C)産経新聞社

 今はサッカーが難しい。しんどい。サッカーをさせられている。90分間でやることが決められている。その中で個を出せ、と言うのはわかるけど、放っといてほしい。ミーティングでもようわからん戦術が山盛り。サカつくやん。サッカーがホンマに難しくなった。

 柿谷曜一朗が引退会見とその後の囲み取材で語った「現代サッカーへのアンチテーゼ」は、かなりのインパクトがあった。「柿谷らしい」「彼ならではの言葉」と受け取った人もいるかもしれないが、筆者は特別なものとは思わない。おそらく、サッカー選手の7割は柿谷に同意するのではないか。

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 筆者は2022年に元大宮の監督、現在は山形でコーチを務める岩瀬健氏の著書『サッカー指導者は伝え方で決まる』の構成に携わった。その本の帯にはこう記されている。

「選手の約7割は指導者の理論を欲していない」――。

 戦術に興味を持ち、研究し、それを選手に落とし込めるのが有能な指導者だと思っている人は多いかもしれない。だが、実は選手はそれを欲していない。ロジックを噛み砕けばいいというものでもなく、そもそもロジックが要らない。7割の選手はそれが本心だ。彼らにとって、指導は「おせっかい」に近い。

 ロジカルに話し、指導者の言うことをすぐに理解する選手は、兎角良い選手に見えがちだ。しかし、それと実際にできることは別。考えること、興味があること、実際にできることがハイレベルにマッチしていた中村憲剛のような選手は奇跡に近く、大半はもっとアンバランスだ。みんな凸凹がある。人離れした身体能力、神業の技術を持つ選手が、ロジックに対して苦い顔をすることなど、この分野では日常である。

 そうした「ロジックを欲しがらない7割の選手」が持つ才能や能力を、漏らさず生かすためには、フィーリングを掴むコツのような伝え方が必要。だが、最近の指導者はインプットばかりに熱中し、アウトプットが疎かになっていないか。選手の顔を見ていないのではないか。そうした時代の趨勢を踏まえ、当時、自戒を込めて著書のテーマに選ばれたのが「伝え方」だった。

 今回の柿谷の明け透けな言葉から、真っ先に思い出したのが当時の本である。指導サイドのロジックに疲れた様子はまさに、だった。

 しかし、こうした選手の本心がメディアに載るのは珍しい。当然だ。現役の選手がそれを正直に言えば、自身の評価に関わるから。「戦術のわからん選手」と思われるのはデメリットでしかない。監督批判と受け取られる恐れすらある。だから柿谷の発言に7割の選手が同意するであろう実態も、表には出ない。

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