【医師に相談】手根管症候群とはどのような病気ですか?
Q:手根管症候群はどうやって診断しますか、自分でできる診断方法はありますか?
Tinel試験
手首の手のひら側の中心をハンマーのようなもので軽く叩くとしびれや痛みが指先に響く症状をTinelサインと呼びます。
Phalen試験
両手の手の甲を合わせて90度曲げ、30秒保持した時にしびれや痛みの症状が強くなると手根管症候群が疑われます。
手関節を90度曲げた状態で保持すると、正中神経領域(親指、人差し指、中指と薬指の親指側半分から手のひら)にしびれ感が出現すると陽性です。
Q:手根管症候群は自然に治りますか 放っておくとどうなりますか?
症状が軽い場合は手首の使い過ぎに注意し、安静を保つことで自然に治ることもあります。しかし、自然に改善することは少なく症状は緩やかに進行するため、「痺れているけどそのうち治るだろう」と自己判断で放置すると、感覚や運動機能が著しく低下する場合があります。気づいたときには症状が悪化している場合が多く、治療が難しくなることもあります。
症状が進行すると、夜間だけでなく日中にも手のしびれや痛みが現れ、物をつかむ動作やボタンの開閉が難しくなります。さらに悪化すると、親指の付け根にある筋肉(母指球筋)の萎縮が起こり、細かい作業が困難になるだけでなく、親指と人差し指で丸を作る「Perfect O Sign」ができなくなることもあります。
温度に対する感覚も鈍くなるため火傷をしても気づかないといった危険な状況に陥ることもあります。
セルフチェック
親指と人差し指の先を合わせてOKサインをします。
親指と人差し指できれいな丸が作れない時は、手根管症候群によって母指球筋(親指の付け根周囲の筋肉)の機能が低下している可能性が考えられます。
早期発見・早期治療により症状の進行を防ぎ、生活の質を守ることができます。手根管症候群が疑われる場合は、速やかに医師に相談することをおすすめします。
Q:手根管症候群でやってはいけないことは何ですか?
手は日常生活で頻繁に使うため使用をひかえることは難しいですが、手根管内圧に関する報告では、手首を伸展で10倍、屈曲は8倍に圧力が増加すると言われています。そのため、家事や仕事、スポーツで手を酷使することは避け自己判断せず専門医に相談しましょう。
例えば日常生活の避けるべき動作にてスマートフォンで指を滑らせて入力するフリック入力は手に大きな負担がかかるため、音声入力やペン型のツールを使うなど操作を別の方法に変えましょう。
また包丁や調理器具を使う時は手首を固定するためのサポーターを装着し、重い鍋や食器は両手で持つなど、手への負担をなるべく軽減させる工夫をしましょう。タオルや雑巾を絞る動作も大きな負担がかかるため、これらの動作は避けましょう。
特にゴルフやテニスなど手を使うスポーツは一旦中止し、専門医に相談しながら再開のタイミングを検討する必要があります。
手根管症候群に効くストレッチ方法はありますか
反対側の手で親指の付け根をつかみます。
ゆっくりと手のひら(赤丸の部分)を広げるように軽く親指を引っ張ります。
10秒程度を3回繰り返します。
肘を曲げ、反対側の手で前腕の手首側1/3あたり(赤丸の部分)をつかみます。
ゆっくりと指を曲げたり伸ばしたりします。
10回程度繰り返します。
Q:手根管症候群はどうやって治しますか?
手根管症候群の保存的療法には、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの飲み薬、湿布薬、運動や仕事の軽減などやシーネ固定などの局所安静が挙げられます。
また、手根管内にステロイド注射などを行う保存的療法もありますが、副作用として腱の変性と脆弱性を増やしたり、1-2カ月で症状が再燃することが多いです。
最近になって動注治療やカテーテル治療といった新しい治療が開発され、これまでよりも効果的に治療できるようになっています。
Q:手根管症候群の手術のデメリットは何ですか?
観血的治療として手術による手根管開放術による正中神経の減圧が一般的です。高い成功率が報告されていますが、最悪の場合は創傷に関連した症状として持続的な脱力感やPillar Painと言われる傷口の痛みが続くことがあったり、握力の低下なども報告があります。
Q:手根管症候群ですが切らずに治す効果的な方法はありますでしょうか?
通常、手根管内の屈筋滑膜は炎症を起こしており、浮腫が起こることで通常の膜状の滑膜より体積が大きくなっています。炎症部位には、異常な血管が増えており、痛みの原因になっていることが最近の研究でわかってきました。
当院では身体への負担が少なく、術後の安静期間も短い治療として、動注治療や運動器カテーテル治療を実施しています。はじめに手首または足の付け根を局所麻酔して、とても細くて柔らかいチューブ(カテーテル)を血管に進めて、炎症の原因となっている異常な血管を見つけます。その後、その異常な血管に小さな粒子を投与します。その後、カテーテルは抜きますので、体の中には何も残りません。カテーテルを挿入した場所を止血して治療は終わり、日帰り治療となります。組織を切除したりはしないので、前述したようなPillar Painは起こりません。
[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療]
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