【医師に相談】前立腺炎(慢性前立腺炎)とはどのような病気ですか?
[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療(https://okuno-y-clinic.com)]
Q:前立腺炎(慢性前立腺炎)と診断されました。どんな病気ですか?
前立腺炎は、前立腺に腫れや炎症が生じ、排尿困難感や痛みが生じる病気です。前立腺は膀胱のすぐ下に位置しており、精子への栄養やpHの調整、精子の運搬の役割をもつ精液を産生しています。
前立腺炎は急性の前立腺炎と、3か月以上続く慢性前立腺炎に分かれます。急性のものは細菌感染によるものがほとんどです。慢性の前立腺炎には、細菌感染によるものもありますがそれらは少数(約1割)であり、ほとんどは細菌感染が関係しない慢性前立腺炎とされ、原因が特定されていません。
前立腺炎の症状には排尿困難、排尿時の痛み、陰部の痛み、頻尿、下腹部の痛みなどの症状を伴います。慢性前立腺炎は、10代、20代でもかかることがありますが、特に35歳から50歳の男性がかかりやすい傾向にあります。頻度の高い疾患で、男性の10%から15%がかかるとされています(※1)。
治療は抗生物質の投与と対症療法が中心となります。治療に反応して症状が改善することが多いですが、一部の方は難治化して、症状が遷延します。
Q:前立腺炎の症状にはどんなものがありますか?
前立腺炎の症状には以下のようなものがあります。
・頻尿、尿意ひっ迫(すぐに尿意を催す)
・夜間の頻尿
・排尿時の焼けるような痛み
・排尿の開始時に出にくく、その後に急に出始める
・腰痛
・便秘
・下腹部痛
・足の付け根、大腿部の痛み・しびれ
・尿中に血が混じる
・残尿感
・勃起時の痛み
・ムズムズとした不快感
・睾丸と肛門の間の部位の痛み
細菌感染による前立腺炎では、上記のような症状のほかに、寒気や発熱などインフルエンザの時のような症状が加わります。
Q:前立腺炎になる原因はなんですか?
細菌性の前立腺炎は尿路からの逆行性感染(尿道から細菌が侵入して尿とは逆方向に進むこと)が原因となります。抗生物質による治療が効果を発揮しますが、きちんと治さないと再発や慢性化の原因にもなります。
細菌感染の関係ない、非感染性前立腺炎の原因はまだ詳しくわかっていません。様々な仮説があり、そのなかには、前立腺に対する自己免疫ととらえるものや、尿の内容物により前立腺が炎症を起こしているというもの、あるいは周囲の神経や筋肉の機能不全なども原因と考えられています。
前立腺炎のリスクファクター(これらの項目が当てはまると前立腺炎になりやすい)としては、
・若い年代、あるいは中年層
・過去に前立腺炎になったことがある
・尿道炎、膀胱炎の既往がある
・自転車や乗馬などによる骨盤への怪我
・尿道カテーテルを入れたことがある
・前立腺の生検をしたことがある
などが挙げられます。
Q:前立腺炎はどのようにして診断しますか?
まずは問診でこれまでの経過や症状を聞きます。さらに以下に挙げる検査を行なうことで、他の病気との鑑別をするとともに、どのタイプの前立腺炎なのかを診断していきます。
尿検査
細菌感染による前立腺炎が疑われる場合は、尿検査をして膿尿、細菌尿の存在を確かめます。
血液検査
炎症マーカーが高いかどうかで急性のものか慢性かを判断します。また、PSAという腫瘍マーカーを測定します。前立腺炎でも値が高くなりますが、治療とともに低くなるので、前立腺がんと見分けることができます。
直腸診
必要であれば直腸診を行ないます。直腸診とは、医師が手袋をはめて指を直腸に挿入し、直腸側から前立腺を圧迫して、前立腺が腫れているか、そして圧迫することで痛みや違和感がでるかを確かめる徒手的な検査です。
画像検査
画像検査としてはMRI検査、超音波検査、CT検査が行われることがあります。
MRIを撮影することで、骨盤内の全体の状況が把握できます。また、前立腺がんや前立腺内の炎症による信号変化をとらえることができます。
上記の検査を行なうことで、以下の4つのタイプに分けていきます。
1.急性細菌性前立腺炎
風邪のような症状とともに急に発症します。発熱、悪寒、吐気、嘔吐などを伴うことが特徴です。
2.慢性細菌性前立腺炎
前立腺炎の原因になった細菌を十分に抗生物質で治療できなかった場合は、感染が再発したり、難治化することがあります。慢性化した場合、強い症状が出る時期もあれば、無症状や軽度の症状しか出ない時期もあります。
3.慢性前立腺炎・慢性骨盤痛症候群(Chronic prostatitis/Chronic Pelvic Pain Syndrome:CP/CPPS)
細菌感染が関与しない慢性の経過をたどる前立腺炎で、すべての前立腺炎の中でこのタイプが最も多いです。原因の同定ができないことがしばしばあります。長期にわたって同じくらいの強さの症状が続くことも多く、また場合によっては改善と増悪を繰り返します。
4.無症候性炎症性前立腺炎
このタイプは症状が起きず、尿検査で白血球が出てたまたま見つかるものです。特に治療を要するものではありません。