TFCC損傷という症状をご存知ですか?
[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療(https://okuno-y-clinic.com)]
Q:手首が痛くて病院に行ったらTFCC損傷と言われました。TFCCとはなんですか?
TFCC(三角線維軟骨複合体)は手首の小指側の位置にあり、2つの骨(橈骨と尺骨)の間を結んでいる靭帯や腱、軟骨などの軟部組織によるネットワーク構造のことを言います。この部位は専門的には「三角線維軟骨複合体」と呼ばれており、この用語の英語表現(Triangular FibroCartilage Complex)の頭文字をとってTFCCと呼んでいます。
TFCCは正常状態では、手首の小指側の安定性、支持性を与えています。また、手首に回旋力(ドアノブを回す、あるいはキラキラ星の振り付けのような手首を回す動作)が加わったときに、力の伝達・分散・吸収の役割があります。
Q:TFCC損傷とはどんな病気ですか?
TFCC損傷とは前述したTFCCが外傷や加齢、繰り返しの負担などでダメージを受けて痛みが出る病気です。転倒して手をついたりしたときや、スポーツでの使いすぎ、手首を酷使する仕事、炎症や加齢性の変化によって症状が出現します。
Q:手首が痛くてTFCC損傷かもしれないと思っています。TFCC損傷の症状はどんなものですか?
手首(リスト)の小指側に痛みが生じます。
特にタオルを絞ったり、ドアノブを回したりする動作や重い物を持つなどの際、また手首を小指側に倒す動きや手首を捻る際に痛みが生じます。また症状が強い場合は安静にしていても痛みを覚えることがあります。さらに動作の開始時に手の抜ける感覚を感じることもあります。また、手首の腫れ、可動域の制限などの症状があります。
Q:TFCC損傷ではなぜ痛くなるのでしょうか?
手首は人体の中でも複雑な構造をしているため、種々の負担により損傷を受けやすい部位と言えます。TFCC損傷の原因には外傷(一度の過度な負担で損傷が起きて治らなくなること)や、使いすぎ(オーバーユーズ、何度も繰り返し負担がかかること)、加齢による組織の脆弱化、炎症などがあります。
実はTFCCが損傷(傷ついた状態になる)されていても「痛くない」という人がほとんどです。TFCCに傷があっても8割の人は痛くありません。ではなぜ一部の人には強い痛みが出てしまうのでしょうか?
実は痛みが出てしまっている人は、MRIで検査してみると、TFCC損傷部に異常な血管が増えてしまっていることがわかっています。さらに異常な血管と神経が一緒になって増えてしまうために強い痛みの原因となってしまっています。詳しくはこのページの最後の方も参考にしてみてください。
TFCC損傷のリスク因子(この要素を多く持つほどTFCC損傷にかかりやすい)については、
1.加齢
2.関節リウマチや痛風持ち
3.野球、テニス、ゴルフなどのスポーツ活動
などが挙げられます。
Q:TFCC損傷はどのようにして診断しますか?
身体所見と画像検査により診断します。
身体所見では手首に圧痛があるか、手首の回旋で痛みが生じるかなどを把握します。MRIでは脂肪抑制T2で高信号となり、診断の根拠になります。関節造影検査などもありますが、現在はMRI検査のほうが一般的です。