「グレイシー一族に恨まれ続けた」元PRIDE戦士のコロナ禍で前進するためのポジティブ対談 『困難を正面から乗り越えていけばいくほど人間は強くなる』
困難を正面から乗り越えていけばいくほど人間は強くなる
この対談は『ビジネスエリートがやっているファイトネス』の著者・大山峻護が各界で元気に輝きを放ち活躍しているこれはと思う人達をゲストに迎え、コロナ禍の今だからこそ必要なポジティブメソッドをみなさんにお届けするもの。
第9回は8000メートル級の山を無酸素で6座登った世界的登山家の小西浩文さん。明るさを生命線とし、目標設定を誤らず、困難を乗り越える、そんなお話です。
心は頭の上にある
大山(峻護) 小西んさんと初めてお会いした時、とにかくオーラがすごかった。お話していると汗びっちょりになるぐらい。今は丸くなりましたけど、当時は世界最高峰14座を無酸素で登頂しようというぐらい、生きるか死ぬかのチャレンジをしていた人なので、とにかくとんがっていましたよね。
小西(浩文) そうですか(笑)
大山 でも、逆境を乗り越える力というか、小西さんの乗り越えた逆境はとにかくスゴい。そのどれか一つを経験してみるだけでも、普通の人は人生が無茶苦茶になると思うんですが、それをいくつも乗り越えながらもめちゃくちゃ前向きに生きているのが小西さんなんです。そのマインドをみなさんに知っていただきたくて今回お話が聞けたらと思っています。よろしくお願いします。
小西 そんな偉そうものじゃないですけど。よろしくお願いします。
大山 小西さんは生きるか死ぬかを乗り越えてき人。8000mの山を命かけて6座登って、阪神淡路大震災では宝塚の実家が倒壊、さらにこれまで4回がんの手術もした。それをいつも前向きなメンタルで全部乗り越えているのには感心させられます。
小西 あとあれね。山から下り家に帰ってみたら、奥さんと子どもがいなくて、あるのは布団と冷蔵庫だけだったというね(笑)
大山 笑い話じゃないですよね。どれか一つあっただけでも、スゴい大事件なのにそれをすべて乗り越えるメンタルのお話を聞きたいんですが、小西さんはとにかく明るいですよね。その明るさに何か意味があるのかなあ?
小西 そうですかね。でも、生きるか死ぬかをやっていると最後の最後は明るさが生命線なんですよ。明るさだけ。脳が暗くなったらおしまい。逆に言うと、暗くなっときは厳しいですね。脳が、というか心と言ってもいいですが、そこが暗くなったらダメなんです。
大山 それは、どういう状態なんですか?
小西 脳っていうのは頭にあるじゃないですか。そして、心は脳の子どもというふうに私は定義しているんですが、心は脳の上あたりに発生するんですね。でも心をそこ(脳の上あたり)に置いておくと悪さをするんですよね。
大山 悪さですか?
小西 そう、悪さ。例えば「逆上する」なんていいますが、字にしたら「逆」に「上」ですよね。では何が逆に上に上がってくるのか? それは「心」なんです。
では反対の意味の「落ち着く」はどういうことか?
これは心を臍下(せいか)丹田(へその下三寸あたり)に落としていく。落としていって着いたのが底ですよという話なんです。
でも、心というものはたいていの場合、頭の上あたりにある。よくオーバーシンキングなんて言われますが、頭の上にあると動きすぎる、つまり考えすぎてしまうんです。
それによって、人間は自滅するんですね。例えば、鬱なんていうものはその典型なんです。
大山 山とかで危険な状態があるじゃないですが、猛吹雪になるとか。とくに小西さんの場合は、ヒマラヤ登山などはシェルパと2人のことが多い。普通の人ならいろいろ考えてしまいパニックになりそうなイメージですが、小西さんはならないんですか?
小西 それは、「えっ!」と思うことはありますけど、パニックになることはありませんね。
大山 そうならない秘訣とかあるんですか? 絶体絶命のピンチを切り抜ける方法といいますか……。
小西 私の場合はどうやったら生還できるかしか考えていませんね。
大山 ダメだと思うこともなく?
小西 ダメだというのはまずいです。絶対に口に出して言ってはダメ。人間というのは「ダメだ」となると何もかにもダメになるんです。
ヨーロッパにアイガーという富士山ぐらいの山があって、その山にアイガー北壁と言われる1500mぐらいの垂直な岸壁があります。これはヨーロッパで一番難しい岸壁と言われるものですが、そこを初登攀しよう(初めて登ろう)としたドイツクライマーが、途中で失敗して岩に宙釣り状態になってしまったんです。
実はアイガーという山には岩盤をくりぬいた鉄道のトンネルがとおっていて、そのトンネルの窓から救助しようとトライしたんですが、どうしてもロープが届かなかったんです。当然自分で脱出することも不可能な状態で、そのクライマーが一言「ダメだ」と言ったんです。その瞬間、クライマーは体が反った感じで逆くの字になって死んでしまいました
結局、彼はダメだといった瞬間に死んでしまった。彼の「ダメだ」という絶望感が彼を殺したんですね。これは典型的な例です。
なので、「ダメ」というのは絶対に口にしてはいけないんです。
極端なことを言えば「死んでも言ってはダメ」。
大山 僕もネガティブな思い込みでリングに上がったときは、当然ですが良い結果は得られなかったですね。
でもそれがわかったのは現役を引退してからでした。イメージングがいかに大事かというか。