苦労の共感があるからこそ【やる気】(感情)のスイッチが入る
「新生活の乗り切り法」や「やる気の起こし方」 #2
やる気スイッチグループで、子供たちを教える立場である講師を指導する講師として、また教育の場やスポーツ選手などの「やる気」を支える縁の下の力持ち的な存在であるシニアコンサルタントの佐藤広康さんに「新生活の乗り切り法」や「やる気の起こし方」についてお話を伺う第二弾。前回は労(ねぎら)うことの大切さとポイントまでをお聞きしました。
(前回:大人の「やる気スイッチ」はどこにあるのか?新生活を乗り切るストレス解消法)
一番大事なのは相手の苦労を10倍に受け取ること
この先が一番大事なのですが、「相手の苦労を10倍にして受け取ること」です。何故かと言いますと、人は自分が10大変だと思っていることを5とか4で割り引いて「大変だね。」と言われても、分かってもらっている感じがしないからなのです。
10大変だと思ったら、10か10以上大変と思ってもらえてはじめて分かってもらえたと感じます。ところが人は、相手の経験はリアリティが小さいので過小評価してしまうのです。
ある友人が、「すごい大雨に降られて大変だった」という武勇伝が始まった時、「俺なんかもっと大変な大雨に降られたことあるよ」となって、よく聞いたら同じ日の同じ市内だったなんてことがありました。この話からも分かるように他人の大変さは過小評価してしまいます。相手の言うことをそのまま受け止めても理解ができない、大変さを感じてあげられないのです。そこで、だいたい10倍くらい想像して受け止めると、相手が感じているのと同じかそれ以上に大変さが分かってあげられます。
例えば、残業で旦那さんが「4時間も残業して疲れた」などと言うと、奥さんは「は?そんなことはどんなところでもあるでしょう」となりがちです。ですが、【8時間働いた後で、40時間残業して帰ってきた】となると「よくぞ過労死せずに帰って来てくださいました」となるわけです。
逆に、奥さんが1歳半の子供と一日過ごして「一日面倒見るのが大変だった」と言われても「世の中のお母さんはみんな面倒見ているよね。」となりますが、【10人の子供を一人で面倒見た】となると、「それは大変だったね。」と大変さを理解してあげることができるのです。
大人の場合でも、子供の場合でも
子供達の場合になると子供が「大変だ」と言っても、たいていの大人が「そんなことで大変なんて言うな」となるのです。うちの子が小学2年生に上がって、それまでは絵日記くらいしか宿題がなかったのが、漢字や算数のドリルが宿題で出るようになったのです。「最近、宿題が山のように出て大変だ」と言うから、どのくらいかを尋ねると「漢字ドリル1ページやれと言われた」というので、見てみると漢字が10個並んでいて、その下に四角いマスが10個並んでいただけだったんです。
これを10倍にしてあげると、毎日100個漢字を書くということです。さすがに100個は大変だ!となるので「そんなに毎日漢字ばかり書いていたら指の骨が疲労骨折しそうだね。パパが子供の頃はそんなに出なかったと思う。最近の小学生は大変だね」と言ってあげられるのです。
すると子供は「パパはオレのこと分かってくれている!」となり、気持ちが分かっている人の言うことは素直に聞けるようになるのです。逆に理解してもらえていないと思うと「俺の気持ちも分からないくせに!」となってしまいます。
さらに、上級テクニックがあって、それは苦労を共感するだけでなく、功績を称えること、感謝をすることです。ここまでやると、やる気スイッチが入るくらいの強力な労いになります。子供の苦労していることが、誰のどんな幸せを作るかというのを考え、その功績を称え、感謝するのです。
やる気スイッチはおおまかに三ヶ所に分かれている
やる気スイッチのタイプは大まかには、努力を褒められてやる気になる子、結果を褒められてやる気になること、こだわっていることを認められてやる気になる子、この三つです。
結果を大事にしている親は、子供が言う「こんなに頑張ったのに」が言い訳に聞こえるといいますか、結果の伴わない努力は意味がないと否定しがちで、そこで子供がやる気を失ってしまいます。
努力を大事にしている子は結果が出なくても、そこまでやってきたことに価値があると思っていますし、そこを認めればやる気になる。また、努力タイプの子は、自分が「がんばれたな」と思ったら次のやる気スイッチが入るので、例えば「冬休みがんばれたな」と思うと、冬休み後のスイッチが入ります。
このようにタイプによってどうやる気スイッチを押したらいいか変わります。こういったタイプ別やる気スイッチの入れ方は保護者向けにも講演会をやっています。子供がどのタイプなのかを見極めるため、チェック表を書いてもらい、それを理解します。
こういうタイプには、「こういう間違いが起こりやすいですよ」や「こうした方が良いですよ」というのを指導します。また大人を対象に企業向けに指導することもあります。これはあくまでも一例ですが、人事は努力タイプ、営業は結果タイプ、広報はこだわりタイプが多いですね。
次回【自分でスイッチを入れるためには?】に続きます。(全3回)
■編集部からのお知らせ
3月7日に発売の雑誌「CoCoKARAnext」では読売ジャイアンツ・菅野智之投手のインタビューの他、プロ野球選手に学ぶ仕事術などストレスフルな時期を乗り越える情報を掲載。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
佐藤 広康(さとう・ひろやす)
(株)やる気スイッチグループホールディングス 商品開発部シニアコンサルタント
愛知県生まれ。小・中学校の校長や教諭などへの現職教育、塾講師などへのコーチング研修、保護者への子育て講演など、教育関係の研修実績は1万人を超える。育成した教員が、文部科学省よりベスト意識改革賞・率先実行大賞・文部科学大臣優秀教員表彰を受賞。その他に、世界的な優良企業で研修する講師や、プロスポーツ選手、オリンピック、パラリンピック選手など最前線で活躍するスポーツ選手のメンタルコーチなど、「人材育成のプロ」を多数生み出している。心と心のふれあいを大切にする人材育成のスペシャリスト。
やる気スイッチグループ
一人ひとりの性格、学力、目標に対応して教える、個別を超えた「個性別指導」を実践する個別指導スクールIEや幼児教育、英会話スクールなどを運営する総合教育企業。
https://www.yarukiswitch.jp/