よぎる「城島問題」の悪夢 不動だった甲斐流出で浮上した「穴埋め課題」 問われる4軍まで保有する鷹の真価
巨人移籍を決めた甲斐。この正捕手の引き留めにソフトバンクは奔走したが、チームの想いは叶わなかった。(C)産経新聞社
正捕手流出によるダメージは過去にも
球界屈指の名手がついに決断した。12月17日、巨人はソフトバンクから国内FA権を行使した甲斐拓也と契約合意したことを正式発表した。
今オフにFA市場参戦を決めた巨人は、この師走に動いた。今月16日に中日から自由契約となっていた大物守護神ライデル・マルティネスと4年50億円とも言われる大型契約を締結。さらに楽天退団を決めていた田中将大との契約も確実視される中、阿部慎之助監督が欲していた「扇の要」を手中に収めた。
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甲斐の退団によって小さくないダメージを受けるのはソフトバンクだ。球団公式SNSで「考え抜いた結果、移籍を決断しました」という甲斐本人のコメントには、「今回も素晴らしい条件提示をいただき、ありがたい気持ちでいっぱいです」という言葉もあり、引き留めに全力を注いでいたのは想像に難くない。
ソフトバンクにとって、単純な戦力ダウンは否めない。2013年に支配下登録をされて以来、甲斐はベストナイン3度、ゴールデングラブ7度を受賞。侍ジャパンでもWBCや五輪で日本の司令塔として活躍してきた。それだけの実績を持つベテランが抜けるのだ。
そして、甲斐が“正捕手”の地位を築いた近年のチームは、後進捕手の育成が停滞。昨オフに嶺井博希をDeNAから補強したが、「日本代表捕手」の穴埋めが務まるかと言われれば、懐疑的にならざるを得ない。また、今オフには、現役ドラフトで吉田賢吾が日本ハムに移籍。24年シーズンに二軍79試合で打率.303、3本塁打、33打点の好成績を収めていた若きホープを失った影響は、捕手層の拡充という面でも出そうな気配すらある。
もっとも、正捕手流出によるダメージは過去にもソフトバンクを悩ませていた。その代表格と言えるのは、2005年の城島健司氏(現球団会長付特別アドバイザー兼シニアコーディ―ネーター)の退団だろう。
同年の城島氏は107試合に先発出場し、打っては打率.390、24本塁打、OPS.938をマーク。守備でも守備率.997、盗塁阻止率.397のハイアベレージを記録。まさに攻守両面でチームを牽引した。
そんな不動の捕手は2005年のオフにメジャー挑戦のためFA権を行使し、マリナーズへ移籍。翌年にソフトバンクは山崎勝己と的場直樹の併用プランを採用したが、チーム成績は3位と低迷。2009年には田上秀則が115試合に先発出場するも定着には至らなかった。
その後もFAで補強した細川亨や鶴岡慎也などを軸とした複数捕手の併用策は続き、100試合以上でスタメンマスクを被った捕手は、17年に103試合に出た甲斐まで現れなかった。