オースティン不在でも、牧秀悟の2番固定の根拠は? DeNAの頭脳が明かす“打線論”「4番を打った時に数字が残せず…」【独占】
Aクラス常連となった「礎」
では、打線の核弾頭となる1番の固定の理由は何か。梶原について「昨年の明確な課題、フォアボールの数が極端に少なく、打って出塁率を稼いでいたというところは彼も気にしています」と説く靏岡コーチも、何よりも出塁を求められるトップバッターの役割は十分に承知している。
その上で、「現状狙ってフォアボールを取れる器用さはあんまりありません」と梶原の特性を強調。「本来の彼の積極的なバッティングをメインに考えて、いいときはボール球を振らなくなるので、そうすれば自ずとフォアボールが付いてくると思います」と弱点よりも強みを活かす方針を採用した。実際、その効果は上々で、安打数15本は牧に次いでチーム2位。印象的な活躍で勝利に貢献している。
牧、梶原と比較してやや異なる固定となっているのは、8番の森だ。靏岡コーチは「そこは林(琢真)や京田(陽太)などが入ってくる可能性もあります」と流動的と告白。役割として「とにかく出塁してもらって、ピッチャーがバントで送る。得点圏で上位に回すいいサイクルを作っていく」ことにフォーカスさせているという。ただ、今シーズンも散見されている森が出て梶原が生還させるケースは、1番森、3番梶原、4番牧の“裏クリーンアップ”ともなる。2段構えのオーダーの狙いもある。
このサイクルが効果的に機能していることもあり、「数字も付いてきていますし、現状は1番梶原、2番牧がハマっていると思います。いい流れで得点を取れていますし」と固定し続けている意味を説く。
それゆえに打線全体にも化学反応が起きている。「本来は1番を打ったり、2番もできると思うんですけど、思い切りの良いスイングできますし、OPSも高い選手なのでね」との理由から、今年から加入した俊足巧打の三森大貴をあえて3番に置く布陣を採用。ここまで6試合で好結果に繋がっている。
無論、故障者の復帰や調子次第で固定できていない打順にもメスを入れる可能性はある。あらゆるスタッツを加味する靏岡コーチは、「オースティンが帰ってきたときには、間違いなく4番にバチッとハマってきます」と断言。その上で現時点での4番には「相手ピッチャーとの対戦成績であったり、左右のバランスで考えています」と、アナリストとしての経験をフルに発揮しながら、試行錯誤を重ねる考えを明かした。
「現状は4番に当てはまるバッターは誰が適しているかという形になりますね。まだ固定はできないので、日々選手とコミュニケーションを取りながらやっていってますね」
アレックス・ラミレス政権時もデータを活用した野球でAクラス常連となったDeNA。そこからさらなる進化を遂げた今、しっかりとしたエビデンスを礎に、日々ベターな選択を追求。それがチーム力の底上げにも繋がっていく。
[取材・文/萩原孝弘]
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