開幕延期の恩恵にあずかれる数少ないプロ野球選手たち
個人的に最も危惧していたシナリオは、大谷が投手復帰した5月中旬時点で、エンゼルスがア・リーグ西地区の上位に残っていることでもあった。チームの地区優勝が見えている状態では、投手大谷にフル回転が求められる。大谷自身もチームの勝利を第一に考え、試合ではアドレナリン全開で常に全力プレーを心掛ける選手。ゆえに故障が多い。メスを入れた2018年10月からは、5月だと1年7カ月という期間が空いた状態。トミー・ジョン手術からの復帰期間としては、よくあるスパンといえる。それが7月だと1年9カ月に伸び、より万全の状態でマウンドに帰ってくることになる。再手術を迫られる割合は、この復帰にかかった期間が短いほど上がることはよく知られている。
トミー・ジョン手術から完全復活を果たした投手の中には、術前に比べて球速が増す選手さえいる。これも一時期、同手術が爆発的に増えた要因の一つ。メジャーで100マイル(約161km)を超す速球を投げていた大谷が、最高のステップを踏んで復帰した後に、どんなストレートを投げるのか、今からとても興味深い。
日本プロ野球に目を移しても、キャンプやオープン戦で故障した選手たちは、コロナ騒動のおかげでコンディションを整えて開幕へ臨むことができる。ソフトバンク・千賀滉大投手や高橋礼投手。柳田悠岐外野手も右肘手術明けでスロー調整が続いていた。
またロッテ・佐々木朗希投手、ヤクルト・奥川恭伸投手ら高卒新人1年目は、この時期は社会人としての生活に慣れ、体づくりに充てる時期。開幕が大幅に遅れたことで、無理を強いられることはなく、1年目のシーズンにのんびりしたペースで入っていくことができる。
もっともそうした損得勘定は抜きにして、どの野球関係者も再び野球ができる日を待ちに待っていただろう。ようやく出口からの光りが差し込み始めてきた。ベースボールが世界に、もうすぐ帰ってくる。
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