今季のF1初戦が開始時刻のわずか2時間前に中止に。直前の決断となった重大な理由とは?
今季のF1初戦となるオーストラリアGPが3月13日、大会中止となった。正式発表があったのは初日のフリー走行1回目の開始時刻のわずか2時間前。入場ゲート前には開門を待つ観客がずらりと並び、各ピットではマシンが整備され、すぐに走行できる状況にあった。
中止を説明するレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表((C)RedBull Content Pool)
新型コロナウイルスが世界中で大流行していたが、それでもF1側はレースの開催を強行するつもりでいた。風向きが大きく変わったのは前日の12日。マクラーレンの現地メンバーの中から新型コロナウイルス感染者が出て欠場を決めたことだ。その日の深夜に全チームの代表者による緊急会合がサーキットのあるメルボルン市内のホテルで行われ、中止の是非が協議された。
パドックに全チームのF1スタッフを入れたことが「命取り」に
現地で取材したF1ジャーナリストのルイス・バスコンセロス氏は「当初は4チームが中止、4チームが強行、2チームが棄権と意見がまとまらなかったが、途中でメルセデスが親会社ダイムラーの指示で中止派に回って、レースをすべきではないとの回答となった」としたが、チーム側の上伸は受け入れられず、中止の即時決定には至らなかった。統括する国際自動車連盟(FIA)、運営側のF1運営会社とオーストラリアGPのプロモーターは中止による膨大な金銭的損失や中止責任を伴うことから二の足を踏んだとされる。
ただ、パドックに全チームのF1スタッフを入れたことが「命取り」になったという。1人の感染者が出たマクラーレンでは14人に濃厚接触者の疑いがかけられ、現地で隔離措置が講じられるなど感染拡大を助長した恐れがある。
FIAのジャン・トッド会長は「人民の安全が第一」としたが、この結果、これ以上の感染を防ぐため、無観客レースが決まっていた第2戦バーレーンGPと初開催のベトナムGPの延期を決定。4戦目の中国GPも既に延期が発表されており、開幕4戦分が丸々吹き飛んでしまった。