【山田恵里×入江聖奈②】東京五輪金メダリストが語る「ゾーン」と「プレッシャー」 メダルを獲った人と獲れなかった人の差は…
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東京五輪で金メダルを獲得した2人のアスリートが、同年に現役引退を発表した。ソフトボールの山田恵里とボクシングの入江聖奈。1984年生まれと2000年生まれという歳の差はあれど、「同年に引退した金メダリスト」という共通項を持ったトップアスリートの思考にはシンクロする部分も多かった。3回に渡ってお届けする豪華対談の第2回は、オリンピックという大舞台での「プレッシャー」について語ってもらった。
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ーーソフトボールとボクシング、それぞれの競技で一番緊張する場面について教えてください。
山田 守備だったら、点を取られたら負けちゃう場面は気持ちが入りますね。でも、ボクシングは常に集中するでしょう? 勝負所が常にあるから大変だと思う。
入江 やっぱり流れはあるので、「ちょっと今は相手の流れだな、やばいなあ」と思ったりしますよ。それに、「自分の流れになってる」とか感じるものなので、そこでいかにポイントを積み重ねられるかが大事ですね。
山田 ゾーンに入る感覚ですか?
入江 それが私、ゾーンに入った経験が人生で1回しかなくて、しかも残念なことに練習で来ちゃったんです。もうどんなパンチが来るか分かりました。でも、試合ではないんで、本当にもったいなかったですね。恵里さんは?
山田 すごいピッチャーと対戦する時の方が入りますね。何が来ても打てる感覚がありました。
入江 団体競技だといろいろとプレッシャーもすごそうですね。何で緊張しないんですか?ボクシングは自分の失敗は自分だけで収まるんです。団体スポーツはより緊張するのかなと思うんですけど?
山田 ミスしたらだいぶ重いですね。
入江 自分のせいで負けたらどうしよう、とか考えないですか?
山田 自分の状態が良くないと、あんまり考えないですね。でも、東京オリンピックは緊張しました。プレッシャーが大きすぎて。メダルがかかった試合でサヨナラヒットを打てたんですが、それまではもう絶望的にパフォーマンスが悪くて……。エラーはするし、打てないし。
ーープレッシャーで潰されそうなところを打破したのが、メダルがかかった試合というのはすごいですね。
山田 試合の前の夜にイチローさんの映像を見て気持ちが切り替わったんです。それまでは、「私のオリンピックは終わったな」と思っていたんですが、イチローさんがWBCの予選でずっと不調で、最後に決勝で打ったのを思い出して、その映像を見て「自分も明日から大丈夫だ」みたいに開き直れました。やっぱり勝手に思い込んで気持ちがつらくなっていただけで、吹っ切れてからは楽しめました。
入江 かっこいいー!めちゃめちゃ主人公ですね。
山田 そこまで苦労してきた分が、その1本で報われた感じはしましたね。