田中史朗選手も思わず涙。歴史を変えた2015年大会「南アフリカvs日本」はハードワークの結実
記憶に新しい昨年の日本大会を筆頭に世界中を熱狂、感動させてきた楕円球の祭典、ラグビーワールドカップ。
WOWOWにて7月19日(日)放送の2015年のイングランド大会「南アフリカvs日本」は、ラグビーに留まらず全スポーツ史に刻まれるべき歴史的な試合となった。ワールドカップ通算1勝だった日本代表が優勝候補の南アフリカを撃破し、開催地にちなんで「ブライトンの奇跡」と呼ばれたこの一戦で先発していたのが、日本代表の名スクラムハーフ田中史朗選手だ。
今回は田中選手が活躍したこの試合を自ら解説。あらためて映像を見返して感じたこと、解説しながらにじませた涙、そしてこれからの日本ラグビーへの思いなどをうかがった。
写真:WOWOW
──解説を終えた今、どのようなことを実感していますか?
「試合を見たのは初めてか2回目ぐらいですが、あらためてすごいことをやったんだな、と心から日本代表という存在を誇りに思いました。前半は楽しく解説させていただいた一方で、後半は言葉にならなかったですね。いろいろなことをお伝えしたかったのですが、話すことで試合に集中できなくなると申し訳ないので、集中して見入ってしまいました」
──最後は涙ぐまれてました。
「そうですね。本当にすごいことだなと。この感覚は死ぬまで治らないと思います」
──田中選手はこの歴史的一戦のマン・オブ・ザ・マッチに選出されました。
「選ばれた理由はいまだにわかりません(笑)。たぶんスーパーラグビーに出場して名前が世に出ていたからではないかなと思いますけど、僕以上にリーチ(マイケル)や堀江(翔太)、トンプソン(ルーク)や小野晃征……。もう、全員よかったですね」
──映像で見返したことで新たな発見などはありましたか?
「いろいろなことに気付きました。どれだけ身体を張っていたかなど、ひとりひとりの素晴らしさがわかりましたし、この試合があったからこそ4年後の2019年大会のベスト8があったんだなと、あらためて思いました」
──2015年大会当時の、特に印象深い思い出はありますか?
「日本人も外国人も関係なく、本当にファミリーみたいに仲のいいチームだったことですね。全員が日本のために体を張っていましたし、いいプレーをすることや勝つことに喜んでいました。チームメイトって大事なんだなと再認識しました」
──この南アフリカ戦、視聴者のみなさんにはどのあたりに注目してほしいですか?
「やはり全員の身体の張りようですね。みんなが日本のために、桜のジャージのために身体を張って、あれだけサイズの大きい人たちを苦しめたところをぜひ見ていただきたいです」
──この一戦から、2019年大会にどのような点が引き継がれたと考えていますか?
「やはりハードワークすることです。チームのために身体を張りしんどいことに取り組むのは、この時から受け継がれていると思います。そこからさらにスマートになった結果がジェイミー・ジャパン(ジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチ率いる日本代表)だと思います」
──2019年大会準々決勝の南アフリカ戦との違いはどこにあると考えていますか?
「2019年大会の南アフリカは自分たちの強みを徹底し、たぶん僕たちのことも分析して、驕ることなく準備してきたと思います。2015年大会開幕時、僕らは世界ランキング13位で、(当時3位の)南アフリカは昨年ほどの対策はしていなかったのでしょう。日本代表が強豪を本気にさせるチームになったのは本当に素晴らしいことだと思います」
──2019年大会で日本代表がベスト8入りしたことをどのように捉えていますか?
「日本人でもやればできるんだ、ということを実証できたのではないかと思います。いろいろな人が僕らの姿を見て、自分が今チャレンジしていることに対して『もっとできる』とモチベーションを上げてもらえればうれしいですね」
──日本代表の躍進によってラグビー自体の注目度が変わりました。
「公園でラグビーボールで遊んでいる子や、日本代表のジャージを着て学校に通う子どもたちを見ると、本当に素晴らしいことをやったんだなという思いが芽生えてきます。子どもたちがラグビーと触れ合えば、その子たちが成長した時にさらに強い日本代表になる可能性が上がるので、いろいろな人にラグビーの素晴らしさを感じてもらいたいですね」