先発挑戦直訴も中継ぎ再配置 悔しさを糧に見出した“ハマの大明神”の新境地「バウアーが戻ってきた時点でもうね…」

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「相手に舐められている気がする」

 また、技術面でも磨きをかける。

 元投手コーチの斎藤隆氏にもらった「今持っている真っ直ぐ、スライダー、フォークをまず磨け」と助言を実践。特にスライダーには「先発では使わなきゃいけなかったから、使えるようになった気がするぐらいですよ。でも気がするだけで十分なんです」と投球の幅を広げられたと自信を掴んだ。

「投げないと相手はそのボールを頭の中から消せるので、変なボールでも1球投げられれば、相手バッターの見え方、考え方変わるんですよ。それも結構良かったなっていうポイントですね」

 チームに求められている役割は定まった。慣れ親しんだブルペンで、リーダー格の役割も担う伊勢は「ヤスさん(山﨑康晃)を含めて中心で回っていって、みんなを巻き込んで引っ張っていければ、他の球団にも劣らないリリーフ陣になれると思うので。みんなで頑張っていきたいですね」と胸を張る。

 ただ、「コントロールは良くなってきていますが、怖さがなくなっているからか、相手に舐められている気がするんですよね。入江(大生)とか(ローワン)ウィックとかは怖さがあるから踏み込めないと思うし」と意外な言葉も伊勢は残す。

 怖さがない――。その気づきを首脳陣はどう見ているのか。小杉投手コーチは「彼のもともと持っている素晴らしい入射角があるんです。71試合登板した2020年シーズンは、高めの真っ直ぐが、ライジング系の軌道できていたので空振りが取れていました」と指摘。そして、本人の意見を次のように総括している。

「でも投げミスをしないようにしていった結果、コマンドは良くなったけど本来の良さも消えていったところもあると思いますね。リリースの位置を少し高くしていければいいですね。まだまだ荒々しく行ける年齢ですよ」

 スタートした6年目のシーズン。「もう1回リリーバーとして輝くチャンスを自分で掴み取れるかもしれない。いい年もあったんですけど、やっぱり野球選手として、ピッチャーとして輝くことは本当に難しいと思ってるんで」と目を光らせる伊勢は同時に「最近野球選手ってエンターテイナーだと思ってきているんですよ」とポツり。「打たれるにしても、抑えても球場は盛り上がりますしね。結局アクション起こすのはピッチャーなんで、どっちにも絡むっていうのは面白さの1つだと思うんですよね」と、どこか達観した言葉を口にする。その独自の解釈も彼の魅力のひとつと言えよう。

 ボールは剛く、思考は柔らかく。ハマで愛される“伊勢大明神”は、今日も明日も淡々とブルペンで爪を研ぎ続ける。

[取材・文/萩原孝弘]

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