F1業界に激震 ホンダがF1からの撤退を決めた理由とは?
ホンダが2日、2021年シーズンを最期にF1から撤退すると発表した。パワーユニット供給メーカーとして2015年にシリーズに復帰。今季はレッドブルとアルファタウリの2チームと提携し、昨季は3勝、今季は2勝をマーク。チャンピオンチームのメルセデスと真っ向勝負できるまでになったが、ホンダ首脳陣は活動に終止符を打つ決断を下した。
昨年の開幕戦オーストラリアGPを訪れたホンダの八郷隆弘社長(鶴田真也撮影)
同社の八郷隆弘社長はオンライン会見で「2050年のカーボンニュートラル実現を目指す」と環境に対する次世代技術の開発に経営資源を集中させる方針を掲げ、「F1で培ったエネルギーマネジメント技術や燃料技術、人材を先進パワーユニットとエネルギーの研究開発に投入していく」と撤退の理由を説明した。
カーボンニュートラルとは二酸化炭素の排出量を実質的にゼロにする取り組みで、同社では4月に「先進パワーユニット・エネルギー研究所」を設立。現行のF1用パワーユニットはエンジンと、熱エネルギーや運動エネルギーを回生するモーターを併用するシステムで、F1を戦いながら技術構築していくとみられたが、活動予算を含めて効率的に人材や資源を活用するには、必ずしもF1を続ける必要はないと判断したとみられる。
ホンダにとってF1はDNAだった。創業者の本田宗一郎氏の鶴の一声で1964年にエンジン、車体を自作する、いわゆるワークスチームとしてF1に初参戦。実質的にオートバイメーカーだった会社を4輪事業に拡大させる大転換のきっかけを作った。
今回のF1プロジェクトは第4期と呼ばれる。裏を返せば、過去に3度、F1から姿を消したという意味でもある。同じく「F1命」を標榜するフェラーリが初年度の1950年からF1に参戦を続けているが、ホンダは公害問題、市販車の販売不振、リーマン・ショックなど各時代の全社的な事情で活動をその都度たたんできた。第1期(1964~68年)は5年、第2期(83~92年)は10年、第3期(2000~08年)は9年。第4期の活動は7年でピリオドということになる。