「優勝」という目標は誰のためにある? 森保ジャパンは外野にイジられても「焦らず、揺らがず、保てるか」

久保が攻撃の軸になるのは間違いないだろう。(C)Getty Images
目標が変われば「やるべきこと」が変わる。ワールドカップのラウンド16と準々決勝は、試合の質が大きく異なるからだ。
カタール大会のラウンド16の対戦カードは、オランダ対アメリカ、イングランド対セネガル、アルゼンチン対オーストラリア、フランス対ポーランド、日本対クロアチア、モロッコ対スペイン、ブラジル対韓国、ポルトガル対スイス、以上8試合だった。グループステージの各組1位と2位が対戦するので、力量差のある対戦が多い。(余談だが、日本は1位突破を果たしたにもかかわらず、2位グループの中では最も手強く、その後もベスト4へ勝ち残ったクロアチアとの対戦となり、くじ運の悪さはあった)
一方、準々決勝のカードに目を移すと、オランダ対アルゼンチン、イングランド対フランス、クロアチア対ブラジル、モロッコ対ポルトガル、以上の4試合だ。2位突破の大半はすでに振り落とされており、強豪国、あるいはその大会のシンボリックなチームしか残っていない。もはや楽なカードは一切なく、実際に観戦した印象でも、試合のレベルはここでグッと上がった。
この準々決勝を制してベスト4へ進むためには、総合的な本物の強さが必要になる。逃げ切りの守備とPK戦の強化だけでは、圧倒的に足りない。目標がベスト8とベスト4以上では、「やるべきこと」が大きく変わるわけだ。そして、「やるべきこと」が変わった成果は、カタール大会後のテストマッチでW杯出場国を大量得点で破ったり、最終予選をかつてない好成績と内容で突破した、第二次森保ジャパンのパフォーマンスが示している。
改めて、目標を設定する理由は、モチベーションを高く保つため、やるべきことを明確にするため。この2つだ。周りから納得されるためではない。その意味では妥当な目標修正だった。
ただし、不安を感じる点がないわけではない。それは「優勝」のワードが強すぎること。キャプテンの遠藤航は「(目標を)ベスト4と言ったほうがいいのか、優勝と言ったほうがいいのか悩んだ」「前回経験した選手たちの雰囲気、悔しさを出している選手の会話を聞いたときに、最終的にワールドカップ優勝を目標にしたほうがいいと感じた」と語っている。
言ってしまえば、ベスト4ではなく優勝と宣言した理由は、ノリや雰囲気だ。そのほうが「モチベーションを高く保てる」と判断したわけだが、ここは危うい。ノリや雰囲気は良いときは良いが、悪くなったときは何の保証もない。また、悪い時期が来ないチームはない。