大隣憲司コーチが小久保さんに怒られて気付いた事 【千葉ロッテ選手が大切にDOする言葉】
己のプレースタイルとは、大切にしなくてはいけない事とは
ベンチに戻って、何度も3連打された場面を思い返した。
あと3アウトで試合が終わり勝利となる事を意識した挙句に投げ急いだ。ストレート中心の投球は単調となり、あっさり3連打。結局、1アウトも取れずにマウンドを降りた。本来の大隣の投球スタイルは緩急。プロではカッコつけてストレート勝負を挑んで勝てるほど甘い世界ではない。先輩の猛烈な檄が身に染みた。
そしてその時、自分の投球スタイルを徹底的に追及することを決意した。
「ただ怒られたわけではない。己の投球スタイルをもう一度、見つめ直せと怒ってくれた。野球に限らず人間って案外、自分の事を分かっていないものだと思うんです。どこか人にカッコよく見られたいと思っているし、自分自身を過大評価をしたりしている。野球でいえば、意外と自分の投球スタイル、どういう選手なのかが分かっていない選手が多いと思う。ストレートピッチャーだと思い込んでいても周囲はそうは思っていないことは実はある。そういう意味では自分はあそこで説教をしてもらって変わることが出来た。自分を冷静に見つめ直して、モデルチェンジした。変わるキッカケとなりました」
それからの大隣は徹底して緩急を意識した。オールスターにも出場し、ジャパンのユニフォームにも袖を通した。14年には日本シリーズ第3戦では先発投手を務め7回、被安打3、無失点の好投で勝ち投手となり、ホークスの日本一に貢献した。
大観衆の目の前で醜態をさらしたあの日。今にも泣きそうな顔でベンチに戻った時の後悔の念と、大先輩の愛のある厳しい指摘が大隣をたくましくさせた。それから月日は流れ18年9月に大隣はユニフォームを脱いだ。
不思議な縁も感じている。
あの時、人生のターニングポイントとなった悔しい試合の対戦チームであったマリーンズのユニフォームに最後は袖を通し現役を引退した。そして今度はマリーンズで次代を担う選手育成に力を注ぐ仕事を任された。今、その眼はやる気にみなぎるようにキラキラと輝いている。
「人って成功体験よりも失敗から学ぶものだと思うんです。だから若い選手は失敗をしてもいいと思う。そこでしっかりと寄り添えるコーチになりたい。最初からそれはダメだと言うのではなく、失敗した時に、道しるべとなる事を伝えられる人間になりたいです」
石垣島キャンプで指導者としての第二の野球人生が始まった。どちらかというと優しく見守り、選手に声を掛けながらコミュニケーションを取っている姿が目立つ。
「自分がどういうピッチーなのか考えろ」
大先輩からの一言が自身の人生を変えたように、気付かせてあげられるコーチでありたい。新米投手コーチは日々、奮闘している。
[文:千葉ロッテマリーンズ・広報 梶原紀章]
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