山中慎介が展望を語る 伊藤雅雪が五輪戦士へリングを迎える2度目の防衛戦
WBO世界スーパー・フェザー級王者の伊藤雅雪(28=伴流 27戦25勝13KO1敗1分)が5月25日(日本時間26日)、アメリカのフロリダ州キシミーで同級7位のジャメル・へリング(33=アメリカ 21戦19勝10KO2敗)を相手に2度目の防衛戦に臨む。昨年7月にキシミーで戴冠を果たした伊藤にとっては験のいい場所でのV2戦となるが、挑戦者のへリングは12年ロンドン五輪に出場した実績を持つ長身サウスポーだけに楽観視できないカードといえる。それでも伊藤は「海外で勝つことはスターへの第一歩。世界にアピールしたい」と自信をみせている。この注目ファイトについて、元WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏にみどころを聞いた。
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■攻めて出る姿勢が伊藤を大きく成長させた
――伊藤選手は昨年7月、今回の試合地と同じキシミーで無敗のホープ、クリストファー・ディアス(24=プエルトリコ)からダウンを奪って完勝、世界タイトルを獲得しました。まずは、あの試合についてうかがいたいと思います。
山中「試合前、伊藤選手は『積極的に行く』と言ってはいましたが、正直いって本当に行けるのかどうか疑問に思っていたところはあります。でも、予想以上に積極的に攻めて出たので驚きました。以前とは気持ちが違ったんでしょう」
――山中さんは伊藤選手の初防衛戦(18年12月)をリングサイドの放送席で解説しましたが、さらに成長は感じられましたか。
山中「世界タイトルを獲得したときよりも、さらに強く逞しくなりましたよね。自信をつけたこともあって、一段と成長して凄みを増したと感じました。自分で志願して海外でトレーニングしているほどなので、本当に強くなりたいという思いがあるんでしょう。その強い気持ちがリングの上でも出ていますね」
――山中さんから見て、伊藤選手はどんなボクサーでしょうか。
山中「まず見た目がイケメンですよね(笑)。で、ボクシング以外では優しい性格です。ボクシングに関しては東洋太平洋チャンピオン時代もシャープな面はありましたが、最近はそこに攻めて出る姿勢と力強さが加わりました」
――攻めて出る姿勢、とは具体的にどういうことでしょうか。
山中「最近の世界戦2試合は気持ちが前に出ているので、以前よりも重心が少し前にかかるようになっているんですよ。それがパンチに伝わる力になっているので、重み、威力、強さや凄みに繋がっているんです。前に出ながら繰り出すパンチと下がりながら打つパンチでは体重の乗り方が違いますからね。それに伊藤選手は世界チャンピオンという現状に満足していないし、もっと上に行きたいという思いが見えますね。だからキラキラしているじゃないですか」
――伊藤選手はアマチュア経験がないままプロデビューしたわけですが、潜在的な能力が相当高いということでしょうか。
山中「まだ28歳でしょう? いまの時代でアマチュア経験がないままここまで来るだけでもすごいことだと思います。特別な運動能力、センスがあるんでしょう。まだ開発されていない能力、伸びしろがあると思います」
――アマチュア経験がないため、逆に不安な面もありますか。
山中「サウスポーとの戦い方に関してはどうなのか、そのあたりが気になります。アマチュア出身者の場合、仮にプロでサウスポーとの対戦経験が少なくても戦い方に慣れていることが多いものなんです。でも、アマチュア経験がない選手の場合、サウスポーとの戦い方に不慣れなことがあるんです。これまでに伊藤選手がどれだけ力のあるサウスポーと戦ってきたか、そしてどう戦うか、そのあたりが気になりますね」