井上尚弥、マロニー戦へ意気込み「ラスベガスでやるから塩試合(拙戦)はダメ、KOしなければ意味がない」
「120%に仕上げれば問題ない。倒すなら前半か中盤」
バンタム級のWBAスーパー王座とIBF王座に君臨する「モンスター」井上尚弥(27=大橋)が日本時間の11月1日(日)、アメリカのネバダ州ラスベガスでジェイソン・マロニー(29=オーストラリア)の挑戦を受ける。井上にとってWBA王座は4度目、IBF王座は2度目の防衛戦となる。マロニーはWBO同級1位、WBA3位、WBC5位、IBF4位にランクされている。当初、井上は4月25日にWBO 王者のジョンリエル・カシメロ(31=フィリピン)と3団体の王座統一戦を行う予定だったがコロナ禍のため延期になり、互いに相手を変えて防衛戦に臨むことになった。19戦全勝(16KO)の井上に対しマロニーも22戦21勝(18KO)1敗と極めて高いKO率を残しており、KO決着が確実視されるカードといえる。
強敵との対戦決定を受け、井上は「相手は技術もありタフでスタミナがある。パンチもないわけではないし、面倒くさいタイプ」とマロニーを分析。そのうえで「ラスベガスで戦うからには倒したい。テーマとしては「倒しきる」ということに尽きる。そのためには自分が120パーセントに仕上げること。そうすれば問題ない」と自信と意気込みを口にしている。
初のラスベガスは無観客試合
(c)WOWOW
――4月に予定された試合が延期になり、対戦相手がカシメロからマロニーに変わりました。3団体の王座統一戦ではなくなりましたが、モチベーションに変化はありませんか。
井上「別にベルトに強い興味や執着があるわけではないし、変更も理由(コロナ禍)が理由なので仕方ないと思っています。マロニーも実力のある選手だし、まずは試合ができることに喜びを感じています」
――4団体の王座統一という夢は先送りになりますね。
井上「こういう状況なので、4団体統一という興味は自分のなかでは少し薄らいだ気がします。いまはいかに自分の満足いく相手と戦うかということに興味を感じます」
――昨年11月7日のノニト・ドネア(フィリピン/アメリカ)戦以来、約1年ぶりの試合ということになります。この間、モチベーションを保つのが難しかったのでは?
井上「4月の試合が延期になってからずっと試合モードで来ているので、モチベーションが落ちるということはないです。いつ試合が決まってもいいように体は動かしてきたので。(体調面に関しては)常に7~8 割をキープしていけば試合ができる体はできるので問題はありません。あとは精神的な部分をいかにキープできるか。たしかに1 年ぶりの試合になりますが、(スーパー・フライ級王座を獲得した)オマール・ナルバエス(アルゼンチン)戦のあとの(負傷による)1年のブランクとは気持ちの面で全然違います。ドネア戦でケガをしたので4月の試合だと不安はあったけれど、延期になったことでその不安はなくなりました」
――「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ」優勝で世界的な評価が上がったという実感はありますか。
井上「優勝したことに対する評価は感じるけれど、(WBSS決勝の)ドネア戦が必ずしも求めていたような内容と結果ではなかったので、そういう意味ではファンの期待を裏切ったのかなと自分では思っています。でも、ああいう状況(右目上に裂傷、出血、眼窩底骨折)で12ラウンドを戦いきって勝てたので自信にもなりました」
――今回はボクシングの聖地ともいわれるラスベガスでの試合です。
井上「ラスベガスでやるからには期待されているということなので、KOしなければと感じます」
――今回の試合をとおして何を見せてくれるのでしょうか。
井上「(見てくれる方たちに)元気や活力を届けられたらと思っています。前回は判定だったけれど、相手がドネアだったから満足してもらえたところがあると思うんです。でも、今度は判定までいったらまずいと思っているので、しっかりKOしたいなと思っています」
――初めてのラスベガスで初めての無観客試合。初めてのことが多いですね。
井上「前回のドネア戦が2万人のお客が入って、今度は無観客。すべての条件が初めてですから、気を引き締めていきます」
――不安な点もありますか。
井上「肉体的なものは気にしていないですが、精神的なことに関してはどうかなと思っています。ラスベガスに着いてから2週間の隔離があるので、そこだけです」
井上に挑むジェイソン・マロニーは1991年1月10日、オーストラリアのビクトリア州ミッチャム出身の29歳で、双子の弟アンドリューは今年6月までWBA 世界スーパー・フライ級王座に君臨していた。そのアンドリューは井上と同じ「モンスター」を名乗っており、そんな点にも奇妙な縁が感じられる。マロニーはアマチュアで約80 戦こなしたあと2014年8月にプロデビュー。6年間で21の勝利を収めてきた。細かく立ち位置を変えながらスピードのあるワンツー主体で攻める連打型の選手で、最近は4連続KO勝ちと勢いがある。
唯一の敗北は2年前、井上が優勝した階級最強決定トーナメント「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」
の初戦(準々決勝)で当時のIBF 王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)に惜敗したもの。この試合はアメリカのフロリダ州オーランドで行われたが、勝者と対戦することになっていた井上はリングサイドで生観戦した。