打球頭部直撃からマウンド復帰の田中将大 過去に打球直撃から復活を果たした日本人メジャーリーガーとは
ショッキングな打球の頭部直撃から3週間足らずで、マウンドに復帰への大きな一歩を刻んだ。ヤンキース・田中将大投手が21日、シート打撃に登板。打者5人に20球を投げ、安打性の当たりは許さなかった。
首脳陣は開幕ローテーションからは外れることを明かしているが、多くの動画がネット上にあふれた惨事を思えば、奇跡的な回復だろう。田中は4日のフリー打撃登板で、強打者スタントンのライナー性の打球を頭部に受けた。コロナ禍でただでさえ調整が難しい上に、いきなりのつまずき。今季はレギュラーシーズンが60試合しかない短期決戦で、その時点ではどんなシーズンとなってしまうのか、全く見通しも立てられないほどだった。
だが、不幸中の幸いか、田中が食らったダメージは致命傷には至らなかったようだ。5日には公式ツイッターで「ご心配をおかけしております。患部に痛みはありますが、それ以外は元気です」と報告。それ以降もメジャーリーグの脳振とうプログラムに沿いながら、順調な調整を重ねてきた。
メジャーリーグではここ数十年、投手をライナー性の打球直撃からいかに守っていくかが議論されている。2014年には投手用の緩衝材が付けられた帽子が開発されたが、このデザインが大不評。「まるでスーパーマリオみたいだ」と酷評され、被る選手はほとんど現れなかった。
日本人メジャーリーガーも、頭部直撃と戦ってきた過去がある。これまで、特に強烈な打球を受けながら、復活を果たしてきた投手が2人いる。
1人目がヤクルトからドジャースへ移籍し、旋風を巻き起こした石井一久。ルーキーイヤーの2002年は開幕から6戦6勝という驚異的な滑り出し。6月8日には早くも2桁10勝目を挙げ、その時点でわずか1敗と驚異的な勝率を残していた。
だが、好事魔多し。9月8日のアストロズ戦で頭部に打球直撃を受け、負傷降板した。頭蓋骨の亀裂骨折と診断され、医師から「あと1ミリ、亀裂が長ければ出血死していたかもしれない」と言われるほどの重症で、この登板でシーズンを終えた。1年目の成績は28試合で14勝10敗、防御率4・27。迫っていた規定投球回にはあと8イニング届かなかった。
ただリハビリを経て、翌年は開幕ローテ入り。左膝の負傷に悩まされたものの、27試合で9勝7敗、防御率3・86の成績を残す。続く3年目は31試合で13勝8敗、防御率4・71。172回を投げ、規定投球回も初めてクリアした。