「新聞のスタメン落ち予想を発奮材料に」一塁に挑戦するヤクルト坂口の決意
チームのピースにはまらないとダメなので。使ってもらえることがありがたい。
春季キャンプの守備練習。ヤクルト・坂口は一塁で内野ゴロをさばいていた。本職の外野ではゴールデングラブ賞を4度獲得した名手。美技で何度もチームの窮地を救ってきた。本格的に一塁を守るのは中学の時以来18年ぶりだ。「ファーストミットはメーカーから急いで取り寄せた市販のやつです。実際にやってみるとメチャメチャ難しい。下半身もバリバリ張る。動き方とか初歩的なことから覚えなきゃいけないので他の内野手に聞いて。ルーキーの気持ちですね」。言葉だけを捉えると悲壮感が漂うが、笑顔だった。「逆境?嫌いですよ。よく乗り越えられない試練はないっていうじゃないですか。僕はたくさんあると思います。でも何かの目標に対して目指している時が一番楽しいし、自分自身の伸び率が高い気がする」と前を向いた。
オリックスからヤクルトに移籍して3年目。チームは低迷して主力も故障で次々戦線離脱する中、その活躍は際立ってきた。昨年136試合出場で打率・290、155安打はいずれもチームトップ。「ケガ人が多く出たとか言われるけど、そういうところで勝ちきれなかった。その中で試合に出してもらっている。年齢も上の方で自分がもっとできるんじゃないかという思いはある」と反省を口にする。今年は状況が一変した。ヤクルトで看板選手だった青木がメジャーから電撃復帰。同じ左打ちのリードオフマンでタイプが重なる。青木、バレンティン、雄平との定位置争いを勝ち抜かなければいけない。首脳陣から一塁への挑戦を打診されたのはこの春季キャンプ中だった。「後ろ向きな思いはまったくない。もちろん外野のレギュラーをあきらめたわけではないですよ。でもチームのピースにはまらないとダメなので。
使ってもらえることがありがたいんです。やるからには外野も一塁も全身全霊を掛けてやらないといけない。中途半端にやったら周りに迷惑をかけるし、応援して頂いているファンも見ている。責任があるんです」と粉骨砕身の覚悟を口にする。
今まで幾度も試練を乗り越えてきた。本職の外野で他の選手に負けるつもりは毛頭ない。「全試合スタメンで出たい。そういう状況になったら良い数字がついてくると信じている。一塁でも全然行きますよ」と話した後に続けた。「新聞の予想先発オーダーに自分の名前が入っていないのも発奮材料にして。『坂口がきたか』という状況を虎視眈々と狙っています」。ヤクルトに1番必要なのはこの執念かもしれない。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません
[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]