「簡単に最後までは守れないんだよ」――覚醒が迫る松尾汐恩をどう見る? 百戦錬磨の名捕手コーチが告白した高卒ドラ1の現状

守備面でも、好リードでチームをけん引した松尾。(C)産経新聞社
初のお立ち台で破顔
「待ち望んでたホームランが打てて、本当に嬉しく思います」
DeNA期待のキャッチャー松尾汐恩は、プロ3年目で迎えた初のお立ち台で声を弾ませた。
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2023年に大阪桐蔭高校からドラフト1位でプロ入りをして以来、「1軍でレギュラー」と強気な目標を掲げてきた男は、ルーキーイヤーから非凡なセンスと物怖じしない性格を武器に台頭。1年目は打率.277、7本塁打と堂々の数字を残した。2年目となった昨年はオープン戦では打率.375、1本塁打、OPS1.040と打撃でアピールし、開幕1軍切符をゲット。しかし、レギュラーシーズンでは1軍の壁に当たり、4月中旬にはファーム降格の憂き目にあった。
もっとも、2軍での松尾は別格。打率.326と首位打者級の結果を残し、9月に痛めた手の怪我も癒えた10月には1軍に昇格。迎えたソフトバンクとの日本シリーズでは第2戦で、リバン・モイネロから二塁打を放ち、そのままマスクも被った。全てはチームが3位に滑り込まなければ立つことのできなかった大舞台。運もまた実力のうちだと、改めて感じさせる出来事だった。
迎えたオフは「師」と慕う戸柱恭孝の自主トレに2年連続で参加。「けっこうウェイトトレーニングしました」と厳しく自分を追い込み、キャンプ前には明らかに大きくなった肉体を誇示。春季キャンプも順調に過ごし、2年連続で開幕一軍の座を掴んだ。
満を持して迎えた開幕3戦目だった。松尾は、昨季に2軍で苦楽を共にした平良拳太郎の女房役としてスタメンで出場。序盤は強気なリードで中日打線を封じ込め、3回から5回に連続で続いたピンチにも動じず、ホームを踏ませぬ好リードを披露。5回には、味方打線が手を焼いていたウンベルト・メヒアのスライダーを上手くバットに乗せ、白球をレフトスタンドまで運んだ。
その後は8回の一打逆転の大ピンチでも、丁寧なリードとブロッキングで得点を許さなかった。初ホームランと好リードで勝利へ導き、「今年も始まったばかりですが、これからも活躍できるように頑張るので応援のほどよろしくお願いします」と満員のファンの前で切れ長の目を、キラリと光らせた。
値千金のホームランには「ちょっと芯を外したんですが、いい角度で飛んでくれました。気持ちよくダイヤモンドを一周しました」と破顔一笑。再三のピンチも切り抜け、最少失点で乗り切った守備面にも「先頭バッターをしっかりと取って、一発のあるバッターの前にランナーを溜めないことをやれましたね。勝たないといけないという強い気持ちを持って挑めました」と胸を張った。