8年ぶり単独首位の中日が見せた「ミスをカバーする力」 成長を実感したふたつの場面とは?
■投手コーチの声掛けがピンチ脱出に
二つ目は8回の守り。この回からマウンドに上がった勝野昌慶は150キロ超の速球と高速フォークで、先頭の石上泰輝を三振に抑える。開幕からセットアッパーを担う背番号41は今夜も安泰ーーそう思った矢先にミスを犯してしまう。
1死から度会隆輝が放った打球は一二塁間へ。これを一塁手の中田が処理し、ベースカバーに走る勝野へアンダーハンドトス。これがやや逸れて、勝野は捕球しながらもバランスを崩しベースを踏み外してしまう。審判の判定はセーフ、出塁を許した。
2点リードこそしているものの、一発を浴びたら同点。舞台は敵地・横浜スタジアム、主軸に回っていく打順を思うと、痛恨のミスプレーである。
ここでバッターはタイラー・オースティン。長打力のある外国人打者で、一発のリスクが高い。勝野は初球、外角低めに明らかなボール球を投げた。警戒の色とミスを引きずる気持ちがないまぜになったような次の瞬間、ベンチから小走りにマウンドへ向かう人物がいた。大塚晶文投手コーチである。大塚コーチは勝野の背中を軽く叩きながら一言二言声をかけて、ベンチへ戻っていった。
そして仕切り直しの2球目、高速フォークは真ん中近辺の甘いコースに入るも、打球は上がらず遊撃へ。6-4-3のゲッツーで事なきを得た。
大塚コーチがどんな声掛けをしたかはわからない。ただ間を取りに行っただけかもしれない。それでも、1ボールの時点でマウンドに行く判断は素晴らしかった。勝野も期待に応え、これ以上ない形でイニングを完了させた。今後ベースカバーの練習は必要だろうが、この日においては自らのミスを帳消しにしたのだ。
野球にはミスがつきもの。それをどうカバーするかが大事で、うまくカバーすれば勝利にもつながっていくと教えてもらう、単独首位浮上の夜だった。
[文:尾張初]
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