ピーター・アーツを倒した男の心を震わせたRIZIN.26、「人生勝ち負けだけじゃない」
○所英男vs太田忍●
所選手は43歳で、3年半ぶりのさいたまスーパーアリーナ、年末の大舞台に上がれる喜びと感謝の気持ちが溢れていましたね。太田選手はデビュー戦と思えない落ち着きと戦い方で、オーラが良かったです。みんなをワクワクさせる色気を感じましたね。所選手にあれだけ大胆な戦い方ができて、太田選手の未来を感じた試合でしたが、改めて所選手のすごさを見せつけられた試合でした。
百戦錬磨の経験を持つ所選手らしい勝ち方で、おもしろい試合をしてくれるだろうというファンの期待に見事に期待に応えてくれました。期待に応えられるっていうのはスーパースターの証。太田選手には所選手の技術を凌駕するパワーがありましたが、パワーを凌駕する経験値が所選手にはありました。化け物級のフィジカルを持っている選手に、あれだけのパフォーマンスを見せる、まさに戦うエンターテイナーでした。
●ミノワマンvsスダリオ剛○
またミノワマンが年末に帰ってきました!みんながミノワマンを待っていましたし、それだけ実績を重ねてきた、愛されている選手。44歳のミノワマンが、デビュー2戦目とはいえ、大相撲出身で30キロ差の23歳に挑むって、すごく不利な状況。それでも、そういうものを全てひっくり返してきた男だから、本当にワクワクさせてくれました。
スダリオ選手は素晴らしかったですね。前回見た時はボディコントロールがとても良かったと感じましたが、今回は距離感の取り方が上手でした。相撲は距離がない戦い方なので、短期間でMMAの距離感にアジャストできているのはセンスだと思います。しかもまだ23歳なので、日本に今までいなかったヘビー級ファイターになるんじゃないでしょうか。あのサイズ感でリズム、ステップの取り方、体の使い方はなかなかでできないですからね。これからが楽しみな逸材だと思います。
ミノワマン選手や所選手、山本選手、五味選手など、僕ら世代のファイターたちがこれだけの戦いを見せてくれて、本当に勇気をもらいましたし、頭を叩かれたような感じです。40代の意地と存在感、若手の台頭を見せてくれたいい大会でした。
○那須川天心vsクマンドーイ・ペットジャルーンウィット●
クマンドーイ・ペットジャルーンウィット選手もかなり強い選手なのに、途中から『いつ倒すんだ?』という目で見ていましたね。本当に那須川選手は突き抜けた選手。さすがとしか言いようがないです。普通だったら心のどこかに隙ができてしまうのに、慢心とかが一切ない。自分だけでなく、日本のために、格闘技界のためを思って戦ってきた選手は常に高いパフォーマンスを出し続けますよね。
○朝倉未来vs弥益ドミネーター聡志●
朝倉選手の立場って普通の選手だったらプレッシャーに耐えられないくらいの状況。影響力が大きいということはそれだけスター性があるということ。その裏返して、負けた時の叩かれ方も半端じゃない。しかも前回負けてしまって、中40日で年末のこんな大きな試合。
相手の弥益ドミネーター聡志選手も強くて、しかも予測のできない動きをする、すごく怖い選手。普通の選手なら心折れるか、ナーバスになってしまって、実力を発揮仕切れないですが、心をコントロールして見事でした。また、朝倉選手は戦い方を変えてきたので、これからが楽しみです。今までは天才的な当て勘があるから、前に出させて当てるというスタイルだったけど、今回は先に圧をかけて試合を作っていくというスタイルでした。左のストレートで意識を真ん中に持っていって、外側の左ハイというのは、何となくミルコ・クロコップ を彷彿させるものがありました。
弥益ドミネーター聡志選手は、これわからないぞという空気感を作ってくれた。すごく面白い選手ですね。サラリーマンでありながら、年末のリングに立てるんだって希望をくれた、新しいタイプの選手なので、期待したいです。